技術力、表現力、創造力はどう違うのか

ドラマーのトニー・ウィリアムスがクリニックで、「ドラムの演奏には技術力、表現力、創造力が必要」と言っていました。「表現」は、「心に思うこと、感じていることを音などの形によって表面化させたもの」という意味です(参考『表現力とは』)。いっぽう「創造」は、「新しいものを生み出すこと」という意味です。

こうして比べてみると、「表現」の「表面化させる」という行ないは「思っていること、感じていることを生み出している」と解釈できるため、「創造」の一種であるように思えます。同時に、「表面化させる」「生み出す」という行ないには技術を伴うため、「結局、必要なのは技術」とも言えます。はたして、この3点に違いはあるのでしょうか。

日本語にするとややこしいのですが、トニーの言葉(英語)を書き起こすとわかりやすくなります。技術力は「テクニック(Technique)」、表現力は「フィーリング(Feeling)」、創造力は「クリエイティビティ(Creativity)」を訳した言葉でした。

テクニックとは、「方法」「やり方」のことです。誰がやっても近しい結果になる規則性あるいは論理が組み立てられた「プログラム」のようなものです。コンピュータのプログラムに代表されるように、テクニックは非人間にも適用できます。人が空を飛べるのは、人体に技術があるのではなく、飛行機に技術が搭載されているためです。



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フィーリングは、「気持ち」「感情」と訳せるように、極めて感覚的な要素です。この情報は他者と共有するのが非常に難しいため、自分自身で掴むしかありません(参考『知識と感覚』)。フィーリングを形にするのはテクニックですが、そもそも形にする前に「感じる」をしていることが重要なわけです。

クリエイティビティは、「創造力」の他に「独創力」と訳せます。「独創」とは「独自の思いつきや考え」という意味で、平たく言えば「新しさ」です。前例がないこと、未知であること、誰の真似でもないことを見つけるのが第一歩となるでしょう。テクニックと大きく違うのは、クリエイティビティは論理や規則性から外れた「ひらめき」を要する、という点です。マシンと人間の大きな差ではないでしょうか。

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