「個性を潰さない」は、本当に正しいのか

とある講師のレッスンを見学しに行った際、レッスンする上で最も重要視しているポイントを訊ねると、「生徒の個性を潰さないこと」と返ってきました。国語辞典いわく、個性とは「ある個人を特徴づけている性質、性格。その人固有の特性。パーソナリティー」のことです。「特徴」や「特性」という言葉が出ているせいか、「他人とは違う、その人だけのオリジナリティ」と誤解されやすいのですが、他者と比較する必要はありません。たとえば、「朝食はいつもパンを食べる」というのも十分に個性です。「『朝食はいつもステーキを食べる』くらいじゃないと個性とは呼べない」という思考は、個性と奇抜を履き違えているわけです。

「朝食はいつもパン」という個性を潰さないためには、毎朝パンを買っておく必要があります。問題は、「誰がそのパンを買っておくのか」です。無論、当人自身が買うことで初めてその人の個性となり得るわけで、誰かに買っておいてもらっている間はその人の個性とは呼べません。それは個性ではなく、「朝食はいつもパンが食べたい」という理想です。講師の仕事はその理想を叶えること、つまり、パンを買っておくのではなく、パンを買う術を授けることです。

幼い頃の僕はとんでもなく先生嫌いだったのですが、その原因は「毎朝ステーキが食べたいのに、『パンを食べろ』とうるさかったから」です。「ステーキは身体に悪い」や「みんなはパンを食べている」と必死になって説教をしてくださるのですが、こっちは全て理解した上で「ステーキが食べたい」と言っているのに、どうしてわかってくれないのか、と不思議に思っていました。講師が注意すべき点はこれです。すなわち、潰さないように注意すべきなのは個性ではなく、理想なのです



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結局、僕はステーキを食べることを押し通したので、今ではそれが個性となっています。一度個性になったものは、本人が手放さない限り、絶対に潰れません。

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