質問をしろ!

とある音楽大学のクリニックで講師が「何か質問は?」と訊ねたら、参加者が誰も何も応えなかったので「何でも良いから質問するように」と注意するシーンがありました。「訊くことがないのに、どうやって質問すればいいの?」と思う人もいるかもしれませんが、「訊くことがない」という状態が危険だと講師は言いたかったのでしょう。

質問するためには疑問を持ち、それについて考えなければなりません。質問がないということはつまり、疑問がない状態、あるいは考えるのをやめている状態です。マジシャンが帽子からハトを出しても「何がすごいのかわからない」というのが前者、「すごいなあ」と感心しているだけが後者です。どちらも観客であって、マジシャンにはなれません。マジシャンになるためには、「どうやったのだろう」と考える必要があるのです。

なぜ「何がすごいのかわからない」と思ってしまうのでしょうか。おそらく、「あれは帽子から出したと見せかけて、テーブルの下のカゴからこっそり出しているんだ」とトリックを知っているケースが多いのではないでしょうか。ようするに、「ハトしか見ていない人」です。ハトを出すにいたるまでの動きや言動、演出を見落としているわけです。「ハトを出したことに気がつかなかった」という人もいます。いずれも観察力不足が原因です。



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具体的に、楽器のクリニックで例を出しましょう。講師がメトロノームを使った練習法を紹介したとします。ハトしか見ていない人は「この練習方法は知っている。特に疑問はない」と思うわけです。この場合は「練習方法しか見ていない人」です。たとえば、「この練習をすることでどういった効果が現れたか。その具体例はあるか」とか「メトロノームの音色によって変化はあるか」とか、ちょっと考えただけでも質問は浮かんできます。質問自体に意味があるというより、観察すること、頭を使うことが重要なのです。

僕のレッスンでは、講師から生徒様に質問することが非常に多いです。それも、イエスとノーで答えられるものではなく、「具体的にどうすれば良いか」を訊ねています。「それを教わりにきたんじゃないか」と憤る方もいらっしゃいますが、答えを教えるのではなく、答えを考える術を身に付けるのがレッスンだと僕は考えています。

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