楽器店巡り

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櫻井はあまり楽器店へ行かない。仕事場が楽器店付属の音楽教室なので、一応行くには行っているが、店内を歩き回ることはほとんどない。そもそもスタジオ内で完了する仕事だし、スタッフの邪魔にもなるだろう。たまにピックや接点復活剤などの小物を買わせてもらうことはあるけれど、大半の商品オンラインで購入している。

昔は音楽雑誌を読んで、気になる商品があれば試奏させてもらいに楽器店へ行っていたけれど、今はYouTubeで事足りる。もちろん、動画の演奏はきちんとマイキングをしていたり、編集していたりするので、実のところを確かめるためには自分で音を出す必要はある。「百聞は一見にしかず」だ。しかし、あらゆるギタリストがあらゆる録音環境で演奏しており、その数は膨大で、百聞どころの話ではない。つまり、「一見」に勝るとも劣らない百聞、二百聞の経験を得られるわけだ。

「じゃあ楽器店へ行く意味はないのか」と言われると、それも少し違う。耳で物を見ることができないように、一見することでしか手に入らない情報も確かにある。

先日、ちょっと時間ができたので、楽器店を数店舗周った時のこと。とある店舗ではギブソンのギターだけを集めたフロアがあって、足を踏み入れた瞬間、心がほっと落ち着くのがわかった。他社に比べて木目のギターが多い、という理由もあるかもしれないが、そのフォルムを見ただけでギブソンの音が再生される。これは、写真や動画では引き起こされない。

櫻井は自信がないため、何事も理屈を選ぶ傾向があるのだけれど、こと楽器選びに関してはインスピレーションに頼ることが多い。というのも、理屈で楽器を選んで成功した試しがないのだ。このインスピレーションは自分から生じるものではなく、空から降ってくるような感覚に近い。「神様からの贈り物」と、櫻井はひそかに呼んでいる。

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