教育職はビジネスなのか

音楽講師の中には「講師業はビジネスであり、商売敵(つまり、自分以外の音楽講師)に情報を売る気はない」という意見を持った人がいます。たしかにビジネスではあります。同業者を商売敵とみなすのも頷ける話です。しかし、情報を共有しないのは少々疑問が残ります。

たとえば、ある講師が僕のレッスン方法をまねして、僕の生徒様がその講師に乗り換えたとしましょう。これは情報を共有したことによって僕のパフォーマンスが下がったわけではなく、単に僕がその講師よりも劣っていたというだけです。教え方や考え方を他人にコピーされたくらいでパフォーマンスが下がるのは、付け焼き刃の実力ではないでしょうか。

僕は、教育職は「研究職」に近いと考えています。研究者は長い時間と多くの資金をかけて実験と考察を繰り返しますが、その結果を自分1人のものにせず、論文にするなり学会で発表するなりして公にします。知識をオープンにすることで論理性を高め、他の研究者の助けにもなるからです。研究者は個人の尊厳や名誉といった理由で研究しているのではありません。



★オススメ ライブ




僕は、すべての人が満足するようなレッスンは目指していません。僕が教えられるのはせいぜい百数十名ですし、僕のレッスンが合わない人の方がはるかに多いでしょう。これらの人が満足するためには、どうやったって僕以外の人員が必要です。僕の情報がそれらの人に役立つのなら、共有するに越したことはないのです。

もちろんこれは僕個人の価値観であって、講師業界の総意ではありません。情報の共有を強いるつもりもなければ、一子相伝がごとく横のつながりを持たない価値観を否定するつもりもありません。ただ僕は、自分が最大限にパフォーマンスするためには周囲の助けが必要で、講師業界全体が成長していかなければならないと考えています。お金を受け取っている以上、そこまで考えてパフォーマンスするのがプロでしょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


上部へスクロール