見つめていたい、見つめて欲しい、誰かが私を見つめている

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順にポリスの「Every Breath You Take」、フィル・コリンズの「Against All Odds(Take A Look At Me Now) 」 、ジャズ・スタンダードの「Someone to Watch Over Me」の邦題である。ポリスとフィル・コリンズの曲は、どちらもアーティスト最大のセールスを記録した有名曲なので、知っている人も多いかと思う。それらに比べると知名度は落ちるが、「誰かが私を見つめている」もジャズ・スタンダードの中ではかなり有名なバラードだ。

ポリスの曲は直訳すると「あなたがしている息づかい」みたいな感じだと思う。一体どこから「見つめていたい」をひねり出したかというと、バース(メロ部分)の最後の歌詞である「I’ll be watching you」、訳すると、「私は(将来)あなたを見ているだろう」の歌詞からだと思う。見る人(I)は、「あなたを見つめていたい(I want to watch you) 」と歌っているわけではないが、「息づかいまで見るくらいの意欲があるなら、もう『見つめていたい』でいいんじゃね?」という翻訳者の配慮なのだろう。

フィル・コリンズの曲は、「Take a look at me now」のほぼ直訳である。が、その前の「Against All Odds」の意味がわからない。たしか「Odd」は奇数のことだったと思うので、「すべての奇数への反対」が直訳になるはず。フィル・コリンズはそんなに偶数びいきなのか。「偶数と偶数、合わされば偶数」「奇数は奇数と合わせてしまおう」みたいな歌詞なのだろうな、と思いきや、去っていく相手に振り向いて欲しくて「私を見てくれ!」と歌っているだけだった。「ひとり(奇数)になりたくない!」ということを遠回しに言うと、「Against All Odds」という言い方になるのかもしれない。

「誰かが私を見つめている」もほとんど直訳であるが、歌詞をよく見てみると「私は、『私を見守ってくれる人(Someone to watch over me) 』を必要とし、探している」という意味で、実はまだ見つめられていないことがわかる。また、この曲は元々女性ボーカルであり、見つめられる対象(予定)の性別が「女性」である。男性がこの曲を歌う場合は、歌詞の内容が変わる。例えば、「彼は他の女子が考えているほどハンサムじゃないかもしれないけれど(Although he may not be the man some girls think of as handsome) 」という歌詞は、「僕は他の女子が考えているほどハンサムじゃないかもしれないけれど(Although I may not be the man some girls think of as handsome) 」になる。ジャズの曲ではよくあるパターンなので、覚えておこう。

さて、「見つめたい人」「見つめて欲しい人」「見守ってくれる人を探している人」という3人の登場人物が出そろったが、彼らが全員幸せになるためには、どうすれば良いか。答えは明白で、「見つめたい人が、見つめて欲しい人と見守ってくれる人を探している人の両方を観察する」で解決する。見つめて欲しい人は「私は待つことしかできない」と受動的だし、見守ってくれる人を探している人も「私を迎えに来て、とその人に伝えてくれませんか?」と、なんだかんだ言って他人任せである。その中で「あなたが息をするたびに、動くたびに、絆を破るたびに、歩くたびに、私は見つめているだろう」という、とんでもなく積極的な見つめていたい人は、非常に貴重と言える。1人で2人同時に見るのは少し大変だから、ポリスはバンドなのである。

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