不器用なりの戦い方

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櫻井は大変な不器用で、大抵のことが要領よくできない。楽器演奏も例外ではなく、世界一簡単なポピュラー楽器であるドラムですら初めはまともに扱えなかった。一緒に習い始めた同級生と比べ、明らかに成長のスピードが遅い。どんどん拡がっていく実力差と、自分の情けなさにいたく腹を立てていた学生時代。

これが少年漫画の主人公だったら「ライバルに負けるものか!」と切磋琢磨するのだろうけれど、櫻井は「演奏では勝てないから、別のベクトルから攻めよう」と考えた。真っ向勝負ではなく、姑息な手段を取ったわけだ(悪役の思想である)。できないことはしないし、勝てない勝負には乗らない。みんながみんなヒーローになりたいわけではないのである。

あらゆる悪知恵を働かしてきたけれど、中でも功を奏したのが「知識をつける」だった。カタログや音楽雑誌を読み、やれ器材がどうだの、あのドラマーはこうだの、このテクニックはああだの学び始めたのである。楽器演奏は理解できても実演できなければ意味がないが、知識は知った瞬間、武器になる。幸いなことに、櫻井の記憶力は人並みに働いた。こうして櫻井は、楽器演奏のモチベーションを保っていたのだろう。

「櫻井に見習って知識をつけるべきだ」という話ではない。人にはそれぞれ得手不得手があるのだから、他人の真似をせず自分のスタイルで戦う方が長続きするのだ。才能や器材がなくても、優秀な先生に習わずとも、継続さえしていれば楽器演奏は上達する。

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