もしもあの有名人の才能を自分のものにできたら

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櫻井は幼稚園に入園した時からずっとゲームが好きで、1人でいる時はたいていゲームボーイで遊んでいた。脇目も振らず、一心不乱にゲームをしている櫻井を案じて母は「ゲームは1日1時間」という制約を設けた。もちろん、素直に従う櫻井ではない。鬼の居ぬ間に洗濯よろしく、母が眠った後にこっそり布団の中で懐中電灯を使ってゲームをしていた。今のゲーム機やスマホの液晶には当たり前のようにバックライトがついているけれど、当時のゲームボーイは懐中電灯で照らさないと画面が見えなかったのだ。おかげで櫻井の視力は小数点第2位まで落ち込んでいる。

ゲームに関することだったら何でも積極的になる櫻井が、ある時「プロアクションリプレイ」という機材を知った。ハードとソフトの間に差し込み、ソフトのコードに手を加える改造ツールである。噛み砕いて言うと、所持金やステータスをマックスにしたり、好きなだけアイテムを入手できたりするよう、データを書き換える道具である。データの書き換え、なんて言うと専門的な知識が必要そうだけれど、プロアクションリプレイは誰でも簡単にコードをいじれるのが売りだった。現に当時小学生だった櫻井も使えていた。

櫻井がプロアクションリプレイを購入した時は、ポケモン(初代)が社会現象になっていたころだ。みんながあくせくポケモンを集め、レベルを上げている間、櫻井はコードをいじっていた。どんなポケモンもステータスを限界値まで上げられるので、向かうところ敵なしである。幻のポケモンと呼ばれるミュウも作り放題だったため、友人の何人かに配ったこともあった。まさに、最強をほしいままにしていたのだ。

その後、櫻井は突如ゲームをやめてしまった。いつでも好きなアイテムを手に入れられたり、勝負する前から勝つことが決まっていたりするのが、急速につまらなくなったのだ。プロアクションリプレイを使わなければ楽しめるかと思いきや、1度楽な道を知ってしまうと、普通の道がとんでもなく馬鹿馬鹿しいものに思えてしまう。手軽に手に入れた力は深い退屈を植え付ける、ということ。

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