桃太郎で見る、最適なバランスで組織を編成するアイディア

桃太郎』とは、日本で広く知られている著名な童話の1つです。まず、簡単なあらすじを書いておきます。

ある日、おばあさんは川へ洗濯に向かうと、川上から大きな桃が流れてくるのを目撃する。おばあさんはその桃を持ちかえり、同居人のおじいさんと一緒にその桃を食そうと試みるが、中から現れたのは1人の赤子であった。おばあさんがその子に「桃太郎」と名付けると、桃太郎はすくすく成長し、やがて、悪い鬼を退治しに鬼が島へ旅しに行くことを決意する。旅の道中で桃太郎はきびだんごを使い、犬、猿、雉の3匹を仲間にする。仲間を率いて鬼が島へ上陸し、鬼を退治した桃太郎は、鬼が奪っていた宝を持って故郷へ帰ったのだった。めでたしめでたし。

おそらく、あらすじだけでしたら誰もが知っているでしょう。「桃太郎の仲間が犬、猿、鳥なのは、鬼門の方角(丑寅)に対面しているのが申酉戌だから」というのも有名な話です。しかし、「なぜ桃太郎は鬼が島へ行ったのか」「どうやって鬼が島へ行ったのか」「犬、猿、雉はどのような働きをしたのか」など、デティールまで覚えている人は少ないと思います。実を言うと、桃太郎の話には「最適なバランスで組織を編成するアイディア」が至る所に散りばめられているのです。

今回は、故・楠山正雄氏の著書である『桃太郎』を参考に、桃太郎一行の動きから「組織における各々の役割」を考察します。一人一人の働きを知ることで、桃太郎一行という組織(チーム)がどのようなバランスで編成されているのか理解できるでしょう。

〇桃太郎

桃太郎一行の長であり、組織を束ねる最高責任者です。幼少期から身体が大きく力もあって、15歳にして日本で最も強い人物となりました。さらに桃太郎は「どこか外国へ出て力試しをしたい」と思うほど意識が高く国際的な視野も持った人物でした。そんな桃太郎の元へ、外国の島々を巡ってきた人がやってきます。その人は「船で何年もかかる遠い海の果てに、鬼が島というところがある」という外国の話を桃太郎にしたのでした。それを聞いた桃太郎はいてもたってもいられなくなり、うちに帰ってからすぐに「鬼が島へ行く」とおじいさんに言うのです。そう、桃太郎が鬼が島へ行った理由は、「自分の力がどこまで通用するのか」という動機があったからなのです。

それから桃太郎は「きびだんご」を使って3匹の家来を雇います。その雇い方も実に巧妙で、桃太郎はきびだんごという魅力を腰にぶら下げてた状態、つまり、目に見える位置に配置していたのです。事実、3匹の家来は皆自分から「お供させてください」と懇願しています。力だけでない、桃太郎のビジネス・センスが垣間見えるシーンです。その後、桃太郎一行は船を使って鬼が島へ上陸します。詳細は後述しますが、鬼が島に着くまでと着いてから、桃太郎はほとんど仕事をしていません。ただ1つ、「鬼の大将の背中にまたがって首を絞める」というパフォーマンスを見せているだけです。武器を使わず、わざわざチョークスリーパーのような技をかけているのです。さらに桃太郎は鬼退治の後、家来たちにこう言うのです。「どうだ。鬼退治は面白かろう」、と。

組織における桃太郎の役割は「カリスマ」です。非凡な才能と周りを惹きつける魅力、高い思想を持った人物が、組織の核を成すのです。

〇犬

3匹の中で最初に家来になったのが犬です。船を使って鬼が島へ向かうことになった際、「私が漕ぎ手になる」と真っ先に申し出たのも犬ですし、鬼が島上陸後に門の前で「日本の桃太郎が貴様ら鬼どもを成敗しにきたぞ! ここを開けろ!」と殴りこみにいったのも犬です。桃太郎一行の行動の前線を走る、切り込み隊長と言えます。もちろん、口だけではありません。犬が船を漕いだ結果、何年もかかる道のりが「ほんの目をつぶっている間」まで削減されたのです(1時間かかった、という描写もありますが真偽は不明です)。仮に3年かかる道のりを瞬き1秒で渡ったとなると、およそ99.999999%削減したことになります。これがバーゲンなら定価100万円のギターが1円で買えます



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組織における犬の役割は「エンジン」です。率先して行動できるフット・ワークの軽さと組織全体を動かす強大なパワーを持った人物がいなければ、組織の活動は低迷します。

〇猿

犬と違い、いつも1歩引いて行動するのが猿です。一見消極的な人材に思えますが、船上では舵取りを担当し、犬の超高速巡航を見事に乗りこなしています。上陸後は、犬が門の前で陽動している間に岩壁を登り、中に忍び込んで内側から門を開ける、といった頭脳プレイを見せています。門の開放後は犬と共に鬼の大群に立ち向かっていることから、戦闘能力の高さも伺えます。さらに猿は戦闘終了後の帰り道に、宝を積んだ荷車を後ろから支え押しています(ちなみに犬はこの時も先導しています)。負担のかかっている部分を見抜いて、自然と裏方にまわっているのです。

組織における猿の役割は「サポーター」です。全体を俯瞰できる冷静さを持ちつつ、陰の立役者となれる人物がいなければ、組織は長続きしません。

〇雉

猿の視点は全体を俯瞰できる1歩引いた位置にありますが、雉の視点はそれ以上に広いです。まさに「鳥瞰(ちょうかん)」と呼べる目線で、航海中にいち早く鬼が島を発見したのも雉です。広い海で目印もなく鬼が島を見つけたのですから、観察力だけでなく、いわゆる「先見の明」と呼べる推察力も持っています。いかに速く船を漕いだとしても、また、それをコントロールできたとしても、目的地がどこかわかっていなければゴールには辿りつけません。また、犬や猿と違って戦闘能力の低い雉は、鬼が島上陸後にはほとんど戦闘には参加していません。しかし、犬の陽動中に鬼へ奇襲を仕掛け、成功させています。「犬が引きつけている間に攻撃できる」という推察があったからこそ実行できたのです。さらに、この攻撃によって鬼側に隙が生まれ、猿の頭脳プレイも成功へ導いています。

組織における雉の役割は「ナビゲーター」です。常に1歩前、2歩前を予測し、正しい方向へ導ける人材がいなければ、組織は道を踏み外します。

〇まとめ

桃太郎……組織の核を担うカリスマ
犬……組織の原動力となるエンジン
猿……組織を裏から支えるサポーター
雉……組織を導くナビゲーター

【参考文献】
『桃太郎』楠山正雄(※外部リンク)

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