裸といっても上半身限定で、下半身の衣服を脱ぐことはまずありえません。おそらく、法律に触れるでしょうし、そもそも需要があると思えません。需要については上半身も同じだと思うのですが、なぜか服を脱ぐドラマーが後を絶ちません。
よく挙げられる理由は「暑いから」ですが、暑いのはドラマーに限った話ではありません。ドラムは全身を使って演奏するので運動量が多く見られがちですが、たぶん、一番運動量が多いのはボーカリストです。ドラムが入っていない曲(弾き語りなど)を演奏することはあっても、ボーカルが入らない曲をやるのはまれでしょう。また、ドラマーはずっとイスに座っていますし、曲の間に休憩できます。立ちっぱなしで曲の間もMCをしなければならないボーカリストに比べたら、だいぶ涼しい環境なのではないでしょうか。
では、どうして裸のドラマーが多いのでしょう。大きな理由は2つあって、まず1つは「裸になっても演奏に不都合がない」という点です。たとえば、ギターやベース、サックスなどの管楽器は、ストラップを使って楽器をぶら下げた状態で演奏します。服を着なければ身体に直接楽器やストラップが触れてしまうため、肌にも悪いですし、衛生的にも良くないでしょう。その点、ドラムはスティックやペダルを使って音を出すため、身体が直接楽器に触れることはほとんどありません。よって、裸になっても演奏できるのです。
もう1つは「裸になっても目立ちにくい」という点です。前項の理由では、楽器に身体が直接触れないボーカリストも服を脱ぎやすいことになりますが、これは楽器の性質上、目立ちやすいポジションにあります。よって、多くの聴衆に裸体を見られる環境に晒されるため、裸になるリスクが高まるわけです。代表的なリスクとしては「見た目のパフォーマンスの低下」が挙げられます。ステージ上における裸は、言ってみれば「自分で育てる服」です。少しでも管理を怠れば、だらしない服を着ているのと変わらないでしょう。これを利用して自らの筋肉美をアピールするボーカリストもいますが、並大抵のことではないため、服を着た方が楽、というわけです。
ドラマーはこのリスクが他の楽器に比べて低い環境に置かれています。多くの場合、ステージの後方に位置しているため、観客との距離が離れています。楽器の性質上、音楽的に目立ったパート(ソロなど)も少なく、注目されることもありません。また、楽器(ドラム・セット)自体が大きく、セッティングによってほとんど身体が見えなくなります。つまり、服を着ようが着まいが誰も気にしないため、好き勝手にできる、と言うわけです。
ちなみに、これの派生に「短髪あるいは剃髪のドラマーが多い」があります。薄くなっている部分が異なるだけで、2つの事例は同種です。