素顔のままで、ありのままで、あるがままに

順に、ビリー・ジョエルの『Just the Way You Are』、『アナと雪の女王』の挿入歌『Let It Go』の邦題と、ビートルズの『Let It Be』を和訳したものです。『Just the Way You Are』はなんとなく意味がわかりますが、どうして「Let It ~」で「~のまま」となるのでしょう。2年間海外へ行っていて、「Let’s + 動詞の原形」はよく耳にしましたが、「Let It~」は聞いたことがありません。

そもそも、言葉の分類は、何になるのでしょう。「Go」や「Be」を組み合わせて使用しているということは、助動詞でしょうか。しかし、助動詞ならば、主語の後につけなければ、疑問形になるはずです。この場合の主語は「It」ですから、「Let It Go」は、「?」が省略されていて、「それ、そのまま行くん?」と訳されるべきではないでしょうか。

それとも、「I let it go」の「I」が省略された形なんでしょうか。ためしに、「I let it go」を翻訳したところ、「私は、それを手放す」という意味になりました。つまり、「ありのままでいることは、手放すことである」ということです。深い。ついでに、「I let it be」も翻訳してみました。「私は、それがであるとする」だそうです。「名前を言ってはいけないあの人」みたいなニュアンスですね。

つづいて、日本語の話題に移ります。「素顔のままで」「ありのままで」「あるがままに」の3つは、言葉こそ違うものの、本質は同じで、いずれも「現状維持を促したもの」になるはずです。たとえば、ビリー・ジョエルは、「(他人に対し)新しいファッションを試したり、髪の色を変えたりするんじゃない!」と歌っていますし、ビートルズは、「しんどい時にメアリーさんが来て、『そのままにしとき』って俺に言ってん」と歌っています。



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ところが、『Let It Go』は違います。現状は、「とまどい傷ついている状態」「誰にも打ち明けずに悩んでいる状態」ですが、「このままじゃダメである」、ひいては、「それ(悩む行為)も、もうやめるべきである」と歌っています。現状維持どころか、現状からの脱却を歌っているのです。つまり、歌っている人(松たか子ではなく、キャラクターの方)にとっては、「とまどいもせず、傷つきもせず、悩んでもいない状態」こそが「本来の姿」、すなわち、「現状」であり、今の状態は「異常」である、と考えていることがわかります。

しかし、「とまどいもせず、傷つきもせず、悩んでもいない状態」が、本当に「本来の姿」と言えるのでしょうか。実際、そのキャラクターは、とまどい、傷つき、悩んでいました(でなければ、あの曲が歌われることはなかったでしょう)。それを無視してしまうのは、単に現実逃避をしているだけではないでしょうか。この場合、「空へ風に乗る行為」や「飛び出す行為」よりも、誰かに現状を打ち明ける行為の方が、よっぽど「ありのままで」と言えます。「2度と涙は流さない」とも歌っていますが、涙は流したい時に流すべきではないでしょうか

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