母が子にもたらす最大の影響

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教育学や心理学の本を読むと、決まって「母とは、子にとって人生最初の教師である」といったことが書いてある。男女に関わらず、すなわち、息子であっても娘であっても、母という存在は特別なものなのだ。日本の祝日に「こどもの日」があるが、これは「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する(祝日法2条)」という狙いがあって、このことからも、父と子にはない、母と子の特異性がうかがえる。「人間の性格は3歳までに決まる」と言うが、その3歳までの時間を多く共有するのは母であるし、ひいては、生まれる以前から関係を持っているのは、母ただ1人であり、その影響を強く受けるのは、至極当然のことだと言える。

櫻井自身、母の影響をかなり受けており、自分の趣味嗜好の半分以上は母の影響である、と言っても過言ではないと思う。櫻井が生まれて初めて好きになったアーティストは、母の聞いていたカーペンターズだったし、ジャズやバラードといった静かな音楽が好きになったのも母からの影響である。また、ミステリー作品を好んで読んでいるのも、幼少期に読み聞かせてもらった江戸川乱歩の少年探偵団シリーズの影響が強い。「早く大人になりたい」と思わせる原因になったのも母であったし、なるべき大人の模範となったのも母だった。

母から受けた数ある影響の中で、最も強く受けた影響は何か。母は櫻井に似て(櫻井が母に似ているのだけれど)繊細で、泣き虫で、とても感情的な人だったけれど、誰よりも男らしく生きることを選択していた人だった。彼女の言う男らしさとは、「何物にも動じない強さ」や「細かいことを気にしないおおらかさ」などのことで、そうすることで人生は楽に生きられる、ということをしきりに説いていた。その男らしさにも少なからず影響を受けているけれど、それ以上に影響を受けているのは、その選択を可能にした彼女の「頭脳」だと思う。子のひいき目もあるけれど、櫻井は彼女以上に頭の良い人を見たことがない。

音楽講師業とは、演奏技術や知識を商品として販売する接客業の一種である、と櫻井は考えている。しかし、一介の講師として何か教えられるものがあるとすれば、母が櫻井に見せたような、一個人としての選択、あるいは、生き様ではないだろうか。それは教えようと思って教えられるものではなく、子が勝手に見て育つものである。

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