
「おはようございます」「さようなら」やなど、言語によるコミュニケーションの始まりや、結びに用いる定形句です。「メリー・クリスマス」や「あけましておめでとうございます」といった季節性のもの、お辞儀(礼)や握手などの行動を伴うものなど、バリエーションはさまざまです。言葉自体にそこまで意味はありませんが、「挨拶をする」という行動そのものが常識的な行動というか、マナーの一種とされています。たった数文字のフレーズですが、「挨拶をする」という行いは、社会において「時間を守る」と同水準のエチケットとなっています。
音楽教室の生徒様の中には、楽器そのものを学ぶというより、「挨拶の習慣や、協調性を育てるため」という目的で、子どもに習いごとをさせる保護者の方がいます。こういった要望がある方(多くの場合、母親)は、言葉遣いも丁寧で、子どもに対してもしっかりとした物言いをしています。その態度だけで、十分教育になっているでしょう。
挨拶することは大切ですが、「どうして挨拶は大切なのか」という問いに答えるのは、難しく思えます。もし子どもがそんな風に訊ねてきたとして、上手く答えられるでしょうか。上手く説明できる自信はありませんが、僕なら可能な限り、正直なことを話すよう努めるでしょう。たとえば、「挨拶するのとしないとでは、前者の方が好感をもたれる場合が多く、結果として自分の利益に繋がる」や「大抵の挨拶は、形だけで事足りるので、本気にする必要はない」といった具合になると思います。
専門学校の実技試験の時、試験官の1人がマナーに厳しい人で、「入学試験の際に挨拶ができなかった者は、いかなる技術があっても(8段階中)評価3以下に処す」という基準で評価していたそうです。「楽器の試験にマナーの話を持ち出すな」と反感を持つ生徒もいましたが、同じことをオーディションや講師試験の場で言えるでしょうか。どんな職種にも言えることですが、技術だけでプロの世界はやっていけません。

