人に伝わる喋り方

幼いころは「大人になったらベニチオ・デル・トロみたいに渋い喋り方になるんだろうなあ」と思っていましたが、30歳を過ぎてもなお声が低くなりません。母いわく僕は声変わりが相当早かったらしく、声が高いのもそのせいだ、とのことです。こんなことならもう少し第二次性徴を遅らせれば良かった、と思いましたが、それはそれで「もっと少年声になりたかった」とないものねだりをしていたでしょう。

声はともかく、喋り方だけでも何とかならないか、とデル・トロっぽい喋り方をすると「ボソボソしていて何を言っているかわからない」とお叱りを受けます。ちなみにデル・トロっぽい喋り方とは「目を細める」「眉をハの字に曲げる」「あごを突き出して見下す」「うすら笑いを浮かべる」の4つです。さらにちなむと、僕のデル・トロっぽい喋り方を見て「何それ、デ・ニーロ?」と言ってきた友人もいます。タクシー運転するぞこんちきしょう。

普段から講義をしている「先生」をしている友人が、「話す時は意図的にゆっくり喋るようにしている」と言っていました。友人は大変頭の良い人で、「頭で考えたことをそのままアウトプットしようとすると、情報量が多過ぎて口が追いつかない(回らない)」みたいなことをおっしゃっていました。ためしに「自分にとって自然な速度で喋ってみて」と頼んだところ、抑揚がなく、リズムも一定で、一息でマシンガンの弾を撃ち尽くすような喋り方で、これが「オタクが知識をひけらかす時に早口になる現象か」と思いました。

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ドラム講師とはいえ、曲がりなりにも「先生」と呼ばれる職に就いているため、レッスン中は喋り方に気をつけるようにしています。抑揚やリズムといった「口(舌)の使い方」を意識するのはもちろんですが、基本的には相手に伝わるような「言葉選び」に重きを置いています。特に小学生の生徒様は、まだ学校で習ったことのない言葉がたくさんあるため、わかるような言い回しを考えます。間違ってもハイハット・ペダルのコントロールの説明で「車を運転する時にクラッチ踏みながらキー回して、戻しながらアクセル踏むやんか? あれ」みたいな比喩をしてはいけません。


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