ミュージシャンが自分の楽器を爆発させる理由

腹を立てると物に当たる人がいます。「むしゃくしゃした瞬間、頭上に植木鉢が落下してきた」とか「怒った勢いでタンスの角に足の小指をぶつけた」とか「憤怒のパワーで巨大化したら家が崩壊した」という意味の「当たる」ではなく、「たまったフラストレーションを理由に、物へ攻撃を加える行為」のことです。怒りという感情は目に見えませんが、眉間にしわを寄せたり、大声を出したりすることで表現できます。物に当たるという行為もこの延長線上にあり、感情表現の一種と言えます。

たとえば、調子の悪いテレビを叩いて直そうとする行為も、修理を目的としない行き過ぎたものになると「物に当たる」に含まれます。叩くだけでなく、ケーブルを思いっきり引き抜いたり、リモコンを投げ飛ばしたりするなど、修理のための動作が雑になるのも同様です。これが自分のものではなく、他人のものになると「人に当たる」に変化します。持ち主に攻撃することが目的ではないのですが、現象は同じなので「お前の持ち物に腹を立てただけで、お前を傷つけるつもりはなかった」と言い訳しても意味がありません。

ミュージシャンが自分のギターに火を付けたり、客席にアンプをキャビネットごと突き落としたり、ドラム・セットを爆破していたりするのはほとんどパフォーマンスであり、本当に怒っているわけではありません。「X JAPANのYOSHIKIはドラム・セットを壊す時に本気で怒っている」とおっしゃっている人がいましたが、もしそれが真ならば、彼がいつドラム・セットを壊しても良いように、代わりのドラム・セットを複数台(何度怒るかわからないので)常備しておかなければならないでしょう。壊し終えた後に花火まで打ち上げているので、その準備も必要です。



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しかし、見た目には物に当たっているようにしか見えないので「怒った時はドラム・セットを放り投げてもいいんだ」と勘違いしてしまう人がいるかもしれません。もちろん、自分のドラム・セットを使い、自分のライブハウスでやるならほとんど問題ないのですが、多くの場合、ドラム・セットは借り物ですし、ライブハウスも場所を借りているに過ぎません。ステージを傷つけたり、汚したりする行為は物ではなく人に当たっている、ということを忘れてはなりません。あとで大ごとになって「面白いと思ったからやった。こんなことになるとは思わなかった」と、コンビニのアイス・ケースで寝そべって炎上した人のように後悔しても遅いのです。

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