哲学と心理学の違い

僕の勝手なイメージですが、哲学は「考えても仕方がないことを考える、役に立たない学問」だと思っていました。「役に立たない」という表現は決してけなしているわけではなく、「実に人間的である」という評価です。この世界で人間だけが「生きる」とは無関係の、役に立たないことに没頭できるわけで、その最たるものが哲学なわけです。

いっぼう心理学は、「心の状態や動きを言語化することで安心したがる学問」と思っていました。心とは大変に不確定なもので、自分自身の心ですら理解したり、コントールしたるすることがままなりません。そこで、人間が共通認識できるよう言語によって単純化し、自分や相手の心を理解した「つもり」になることで安心を得ることが心理学の目的だと思っていました。

ところが、最近読んだキェルケゴールの『死に至る病』やアランの『幸福論』は、どちらも哲学書として有名ですが、どちらもその内容は人間の心理に迫るものがあります。たとえば、『死に至る病』の「嘆きの絶望」や「怒りの絶望」は防衛機制に通ずるものがありますし、『幸福論』の情念や後悔に関する考え方は心理学そのものです。読めば読むほど役に立つので、「いったい哲学とは何なのだろう」と哲学的なことを考えてしまいました。

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辞書曰く、哲学は「世界の根源や真理、本質を追求する学問」、心理学は「生物の意識や行動、精神を追求する学問」とありました。研究対象が「世界」か「生物」かの違いですが、「生物」は「世界」に包含されそうな気もします。辞書を読んだ印象ですが、哲学はその思考や過程、つまり、「考えること自体」に価値を見出すのに対し、心理学は行動(言動)や結果ありきなのかな、と感じました。前述の哲学書も、読んで役に立った部分は哲学の本質ではなく、そこに至るまでのプロセスこそ哲学なのかもしれません。

「こうなったらプロに訊いてみよう」と、心理士の友人に哲学と心理学の違いを訊ねたところ、「哲学をやっている奴は病む」「心理学をやっている奴は『自分は大丈夫』と思い込んでいる」だそうです。即答でした。

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