演技と芝居の違い

役者業を営む友人が以前、「演技ではなく芝居がしたい」と言っていました。どちらも同じ意味を持つ言葉ですが、その裏には、友人なりのひねくれこだわりがあるに違いないと勘ぐり、本人に直接聞く前に、自分なりに考察してみました。

まず「演技」という言葉は、役者業以外にも用いられます。たとえば、フィギュアスケートなど、踊りを伴うものは「演技する」というのが一般的です。また「技を演じる」と書くように、そこには技術があり、同時に、技術を用いる者の存在(「演じる」の主格)を表しています。類義語に、前述の踊りで用いられる「演舞」や、音楽で用いられる「演奏」という言葉があります。いずれも、「舞を演ずる」「奏(音楽)を演ずる」と、パフォーマンスという意味だけでなく、パフォーマンスをする何かがいることを示唆している。

では、「芝居」という言葉はどうでしょう。この言葉が用いられるのは役者業か、「一芝居打つ」のように、相手を欺くときに使われます。つまり、主格は芸そのものであることがわかります。相手を欺く際、見せるのは欺いている部分(芸)であり、その主格(本心)を見せては元も子もないからです。



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以上のことから、友人は「人間中心ではなく、芸を中心にしたい」という意味で、「演技ではなく芝居がしたい」と言ったのではないでしょうか。そういう意味であれば、僕も演技ではなく芝居がしたいですし、芝居が見たいです。

当の本人に聞いてみたところ、「『演じている』のと『そこに居る』の違い」とおっしゃっていました。自分らしく、ということでしょうか。真相はさておき、目指しているものが見えているのは、喜ばしいことです。今後の活躍を、薄目で遠くから見守っていければと思います。

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