切り込み隊長と殿(しんがり)

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「切り込み隊長」とは、戦場で先陣を切って進む部隊の長のこと。転じて、組織を先導する人や、全体を活気づける火付け役の人のことを指す。「前人未到の地を切り開いていく勇気ある人」というイメージもあるが、実際の戦闘で「どこへ向かうか」という計画を立てるのは参謀であり、切り込み隊長は決められた作戦を行動に移すだけである。「考えるより先に手が出るタイプ」とも言える。ちょっと前の少年漫画の主人公にこのタイプが多い。

一方「殿(しんがり)」は、戦場で組織の最後列を務める部隊、また、その務めのこと。1番後ろだから意気地なし、と思いきや、この場合の最後列とは「組織が負けて敗走している時」に限定される。要するに、敵に背を向けている組織を守る盾役である。既に負けが確定しており、戦力も失われた状態で盾を務めなければならないので、自己犠牲の象徴とも言える。少年漫画だと「俺に構わず行け!」とか「あとで追いかける。早く逃げろ!」という死亡フラグびんびんの捨て台詞を吐いて退場するキャラクターがこれに相当する。

切り込み隊長と殿、どちらも組織の中で最も敵に接近している部分であるが、組織が無傷であるか負傷しているかの差は非常に大きい。切り込み隊長は最高の環境で戦いを始めるが、殿はほぼ最悪の環境で戦わなければならない。また、切り込み隊長は「最高の状態の保持すること」、殿は「最悪の状態を回避すること」が目標となる。切り込み隊長攻めを務めているが、主たる行動は保持、つまり、固定である。対して殿は守りを務めているが、主たる行動は回避、よって流動なのである。

切り込み隊長のような人は、組織の中で見栄えの良い、華やかなイメージを持たれることが多い。少年漫画で主人公を務めるくらい人気者であると言える。しかし、やっていることは固定的で保守的であり、極めて事なかれ主義である。保身ほど楽な仕事はない。言ってみれば、切り込み隊長の代わりはいくらでもいるのだ。ところが、殿はそうもいかない。殿には、状況に合わせて臨機応変に対応するスキルと、それを実行する行動力がなければならない。切り込み隊長のように代わりがきかないのだ。

このことから学べることは2つ。1つは、誰でもヒーローになれるし、なったところで価値がないということ。もう1つは、能力の良し悪しは、周囲の評判や観察に影響を受けないということ。

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