フラム・アクセントの思い出

フラム・アクセント」とは、26種あるアメリカン・ルーディメンツ(The 26 Standard American Drum Rudiments)の1つです。3連符の1つ目をフラム(複前打音)にし、以下のような手順で演奏します。オルタネイト(左右交互)だった3連符の手順が、フラムの装飾音符が加わったことによってアクセント+片手3連に変化していることがわかります。

フラム・アクセント
フラムアクセント

基礎中の基礎と呼ばれるアメリカン・ルーディメンツの中でも四天王クラスに入るであろう高難易度のテクニックです。片手3連だけでも難しいのに、アクセント部分とタップ部分(片手3連の部分)の差を明確にしなければなりません。さらに、そのアクセント部分がフラムになっており、片手3連の2番目の音でフラムの装飾音符を叩かなければならないという、言葉で説明すると頭が痛くなる複雑なフレーズなのです。

僕がこのフラム・アクセントという壁にぶつかったのは専門学校に通っていたころで、当時教わっていた先生に課題として出されたのです。その前から教本で目にしたことがあり、個人的に叩いてみたことはあったのですが、「物理的に不可能」と判断して敬遠していました。「今ならできるかもしれない」という気持ちはあったのですが、先生が指定したのは「テンポ90で6連符」、演奏するどころか、動かすことすらままならないテンポを指定してきたのです。



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それから2週間、他の課題を差し置いてひたすらフラム・アクセントを練習しました。長時間集中して練習した甲斐あってか、なんとかテンポ90でもスティックを動かせるようになりました。これで何とかなる、そう思っていざ先生に見せたところ、「手が動いているだけで全然コントロールできていない」と笑顔でやり直しを命じられてしまいました。「学校の課題だから多少クオリティが低くても大丈夫だろう」という考えが甘かったのです。結局、課題をクリアしたのはそれから数ヶ月後のことでした。クリアと言っても「まあ、こんなものかなあ」と渋々オーケイして頂いたようなもので、完全なコントロールからはほど遠いクオリティでした。その間ずっと新しい課題をもらえなかったせいで、「貴重な学校生活のほとんどをフラム・アクセントに奪われた」という印象が強く残っています。

フラム・アクセントは相当なストレスでしたが、学ぶべきことも多くありました。一番は先生の「できるまでやらせる」という指導方法です。課題を完全にクリアすることは無理だとしても、妥協して曖昧なまま終わらせてしまうと、知識として蓄えられることはあっても身につかないのです。特にフラム・アクセントのような基礎は、時間がかかっても身につけるべき技術でした。最初の2週間のクオリティでオーケイを出されていたら、その2週間が無駄になっていたでしょう。また、いつまで経ってもできない僕に、ずっと笑顔で付き合ってくれたキャラクターにも救われたところがあります。この先生でなければ途中で投げ出していたか、潰れていたでしょう。

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