どちらもドラム演奏に用いられるシンバルです。形状が似ているため、ドラムを始めたての方や非ドラマーのミュージシャンにとっては違いがよくわからない楽器かもしれません。「クラッシュは『じゃーん』、ライドは『ちんちき』みたいな音」という抽象的な捉え方でもだいたい正解ですが、今回はもう少し深く掘り下げてみたいと思います。
○クラッシュとライドの違い その1
ほとんど同じ形状に見えるクラッシュとライドですが、目に見えてわかる違いとして「大きさ」が挙げられます。一般的に、クラッシュは直径が16インチから18インチ、ライドは20インチ以上のシンバルを指します。例外はありますが、基本的に「一番大きいシンバルがライド」と覚えておけば良いでしょう。
大きさが変わると、音にも変化が表れます。ボリュームやピッチ(音程)などにも影響がありますが、特に重要なのがサステイン(音の余韻)です。シンバルが小さければ小さいほど振幅が減るため、サステインは短くなります。つまり、クラッシュはライドよりもサステインが短いわけです。
○クラッシュとライドの違い その2
見ただけではわかりづらいですが、とても重要な要素に「厚さ」が挙げられます。クラッシュは比較的薄く、ライドは分厚くなっていることがほとんどです。手で触った感触だけでは判別がつきづらいですが、スタンドから外して持った時、厚い方は質量があるので、サイズ以上に重く感じるはずです。よって、「重い方がライド」と覚えておけば良いでしょう。
厚さの違いによる音の変化は「アタック音(物と物がぶつかった時の音)」です。薄いシンバルはアタック音が和らぎますが、分厚いシンバルはキンキンとした金属音が強調される傾向にあります、ライドが分厚く成形されているのは、このアタック音が欲しいから、というわけです。
○クラッシュとライドの違い その3
このように音の違いがつけられている理由は、クラッシュとライドでは用法に違いがあるからです。
クラッシュはセクションの変わり目の目印となったり、フィルインに織り交ぜてアクセントを成したりするなど、「ポイント」をつける際に用いられます。
いっぽうライドは、リズム・パターンの主軸となる音符を担う楽器です。メトロノームのように一定のリズムを刻むため、ポイントというよりは「ストリーム(流れ)」を作る際に用いられます。
たとえば、クラッシュのようにサステインが短く、アタック音が控えめのシンバルでストリームを作ろうとしても、周りの音に埋もれてしまい、アンサンブルを引っ張っていけるようなグルーブを生み出すのは難しいでしょう。逆も然りで、ライドのようにサステインが長く、アタック音が強い音でポイントをつけようとすると、周りの音を潰しかねません。端的にいって、「うるさいプレイ」になりがちなのです。
○まとめ
クラッシュ
「ポイント」を作るシンバル
小さく薄い形状
サステインが短めでアタック音が抑え気味
ライド
「ストリーム」を作るシンバル
大きく分厚い形状
サステインが長めでアタック音が強め
もちろん、叩き方によってライドでポイントを作ったり、クラッシュでストリームを作ったりすることはあります。その場合は「ライドをクラッシュ的用法で叩く」「クラッシュをライド的用法で叩く」といった表現をします。
叩き手が上手ければ、クラッシュがなくてもポイントは作れますし、ライドがなくてもストリームは生み出せます。ただ、クラッシュがあった方がポイントは作りやすいですし、ライドがあった方がストリームは生み出しやすいため、特にこだわりがない限り、両方のシンバルをセッティングすると良いでしょう。