MM殺人事件【事件編】

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 部屋の中央に横たわった男の死体を見て、新米刑事のポール(Paul)は顔をしかめた。事件発覚からわずかしか経っていないせいか、現場には生々しい血の匂いが残っている。
「背後から一撃、凶器は拳銃か」
 ベテラン刑事のハンス(Hans)は膝をついて死体を観察した。
「ポール刑事、報告を」
「被害者はダイ・デッドマン(Die Deadman)氏。クラシック音楽の作曲家で、メイドの話によると、デッドマンは自室であるこの部屋でずっと仕事をしていたそうです」
「この血の量だ、死因は失血死だろう。弾は見つかったのか?」
「いいえ、現場は被害者の指紋まで綺麗に拭き取られています。その代わり、被害者のダイイング・メッセージらしきものが残されていました」

 現場の床には、デッドマンが死の間際に書いた血文字が書かれていた。
「これは、MMか」
「字が震えているので、mmかもしれません」
「彼の関係者で、MMがつく者はいるか?」
「近しいところで言えば、デッドマン夫人の旧姓が『ミラー』でマリア・ミラー(Maria Miller)という名前でした」
「どうして知っている?」
「彼女、結婚する前はプリマドンナだったんですよ。僕、ファンでしたから」
「なんだそれは。女優か?」
「オペラ歌手のことです」
 あんまり売れていなかったみたいですけど、とポールは付け加えた。

「音楽のことはさっぱりわからん。他に容疑者は?」
「夕方ごろ、指揮者のウォルター・ウィリアムス(Walter Williams)が屋敷を訪れ、そのまま行方をくらませています」
「あやしいな」
「ただ、動機の面ではピアニストのエドワード・エリントン(Edward Ellington)が最も疑わしいです。エドワードはデッドマンに多額の借金をしていたそうで、相当いびられていたみたいですよ」

 二人の刑事が頭を悩ませていると、部屋のドアが開き、トレンチコートを着た男が入ってきた。
「アダム(Adam)探偵!」ポールが男に敬礼する。「わざわざお越しいただき、ありがとうございます」
 アダムと呼ばれた男は刑事たちを一瞥すると、目線を死体に移し、じっと観察し始めた。
「何者だ」
 ハンスがポールに耳打ちする。
「音楽探偵として数々の事件を解決してきた方です。今回たまたま現場の近くにいらっしゃったということで、協力を要請しました」

 ポールはアダムに事件のあらましを説明する。
「なるほど。被害者は作曲家で、容疑者は全員音楽関係者、と」
「それで、被害者の残したMMの意味がわからなくてですね……」
「そんなものは大した謎じゃない」しわがれた声でアダムは言った。「わかったぞ、犯人」

 犯人は誰か?
 そして、被害者の残したMMの意味とは?
 
 次回へつづく。

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