とある精神科医の話によれば、「人間の集中力は90分が限界」だそうです。たしかに、たまに2コマ(120分)続けてレッスンをすることがありますが、大抵の生徒様が途中で(肉体的や精神的に)バテてしまいます。また、学生時代に同級生が練習している様子を見ていると、練習時間の1/3から半分くらいは寝ているかぼーっとしている人がほとんどでした。当時は「集中力がないなあ」と思っていましたが、今思うと、至極一般的だったのかもしれません。
自分で言うのもおこがましい話ですが、周囲に比べると、僕の集中力は常人離れしているかもしれません。ドラムの練習なら6時間は叩き続けられるので、単純計算で4倍は集中力があることになります。少々病的ですが、神様からのギフトだと思って喜んでいます。
〇ルーティンや計画はいらない
一般的には皆どうやって集中しているのだろう、と気になって調べたところ「ルーティンを決める」「行き当たりばったりにならないよう綿密に計画を立てる」という方法が挙げられていました。これらは、毎日規則的に練習するためには必要かもしれませんが、集中とはあまり関係がありません。
たとえば、
急な仕事が入ったため、いつもと違う時間帯(あるいは場所)で練習しなければならない
「今日はツインペダルの練習をする」という計画を立てたものの、器材が壊れて予定していた練習ができない
といった状態に陥ったとしても、集中力が欠くことはありません。時間が変わろうと場所が変わろうと、内容が変わろうと練習は練習なので、その地点から集中し始めます。
他にも「スマホなど、練習の妨げになるものを目の届くところに置かない」という意見もありましたが、集中していれば目の届く位置にあっても見えなくなります。むしろ、「気になっている間は集中できていないのだな」という指針になるのではないでしょうか。
〇肉体的負担を減らす
ことドラムの練習において、集中するために大切にしているポイントは主に2つです。1つは「肉体的な負担を減らすこと」です。ドラムはスポーツと違って身体的負担はほとんどありません。コードやメロディを扱う他の楽器と比べれば頭脳疲労はゼロと言っても差し支えないでしょう。
ドラム演奏において最も疲れるのは「耳」です。冒頭で「6時間は叩き続けられる」と書きましたが、最初に駄目になるのが耳で、それ以上は叩いても集中できない(練習にならない)のです。単に身体を動かすだけなら、ドラムは眠りながらでも演奏できます。
なので、耳の負担を少しでも減らすために、演奏中は必ず耳せんを使うようにしています。「耳せんを使うと周りの音が聞えづらくなったり、バランスが取りづらくなったりする」という方もいらっしゃいますが、おそらく、耳せんが合っていないのではないでしょうか。現場に合わせて複数の耳せんを使い分けたり、耳せんのつけ方(差し込む深さ)を変えたりすることによって調整すれば、耳も守りつつ周りの音が聞こえる環境ができると思います。
〇リラックスする
集中するために大切にしているポイント、もう1つは「リラックスすること」です。「集中する」というと、目を光らせたり、燃え上がったり、金髪になったりするなど、「力が入っている状態」を連想する方がいらっしゃいますが、実際は真逆です。「緊張」の対極に位置するのが「集中」と思ってください。
抽象的ですが、「荒野のガンマンの早撃ち」より「コーヒー片手に読書」の方が集中しているイメージがあります。「コーヒーがない方が読書に集中できるのでは?」と思うかもしれませんが、適度な水分とカフェインがあった方がリラックスできるので、「なくても集中はできるけれど、あればより集中できる」という感覚です。
なので、「必須ではないけれど、あればリラックスできる」というポイントを知っておくと良いでしょう。たとえば、些細なポイントですが「照明」が挙げられます。明るすぎると目が疲れますし、暗すぎると譜面が見えにくくなってストレスになります。
難しいのは「リラックスすることが目的ではない」という点です。一般的にリラックスは集中よりも心地良いものなので、気を付けていないと本来の目的を見失いがちです。前述の例で言えば、「コーヒーが美味しすぎて読書どころではない」でしょうか。