人生の名曲10選

前回(『自分の音楽の好みに大きく影響した10冊の本』)、前々回(『自分の音楽の好みに大きく影響した10本のゲーム』)と続いた、「過去を振り返るシリーズ」の最終回です。とあるミュージシャンが「人生の名曲5選」と称して、自分の音楽観に影響を与えた曲や、人生のターニングポイントとなった曲を紹介していたのに倣って、「人生の名曲10選」を考えてみました。邦楽から5曲、洋楽から5曲、時系列順に挙げていきます。

『愛にさよならを』カーペンターズ

母が昔からよく聞いていたのが、カーペンターズのベスト・アルバムでした。同じアルバムを毎日何度もリピートしているので、英語の歌詞なのになんとなく歌えるほど身体で覚えてしまいました。なぜカーペンターズなのか、母に訊ねたところ、「静かな曲が好きだから」とおっしゃっていました。子にとって親の影響は計り知れません。僕も例外ではなく、母からの影響を多分に受けています

『Blue in Green』ビル・エヴァンス

早く大人になりたい」という願望と「静かな曲が好き」という母からの影響が相まって、僕はジャズを聞くようになりました。エヴァンスの『Portrait in Jazz』に収録されたこの曲は特にお気に入りで、よくリピートで再生しながら就寝していました。後に「このドラムやったら俺でも叩ける」と僕を勘違いさせた楽曲であり、ドラムを選ぶきっかけとなった楽曲です。

『YUMEGIWA LAST BOY』スーパーカー

小中学生のころ、夜更かしをして『JAPAN COUNTDOWN』という音楽番組をよく見ていました。その時、毎週のように紹介されて、耳に残っているのがスーパーカーの曲でした。歌詞が秀逸で、文字のリズムがアートになっている楽曲です。本やポエムでは表現できない、「歌詞」だからできる芸術だと思いました。この頃から僕は「リズム」に惹かれていたのかもしれません。

『Spirit dreams inside』ラルク・アン・シエル

人気ゲームシリーズの『ファイナルファンタジー』が映画化された際の主題歌です。当時中学生だった僕はゲーム好きだったため、劇場まで見に行ったのですが、周りで唯一この映画を見ていたのがラルクファンの友人でした。この直後、ゲームハードが壊れたのをきっかけに、僕は音楽好きだった彼に影響され始めます。初めは音楽鑑賞、そして次第に「楽器演奏」に興味を持つようになりました。

『二十億光年の孤独』合唱曲

楽器演奏に興味を持ち始めた僕が初めに手にしたのは、ドラムでもギターでもなく、音楽の教科書でした。「義務教育で習うことを理解できずに、楽器を弾けるはずがない」と思ったのです。音楽好きの友人と真面目に授業に取り組んだおかげで、楽譜や理論といった内容に抵抗がなくなったのは大きな財産となりました。特に合唱が好きで、この時期が一番音楽を楽しんでいたかもしれません。



★オススメ ライブ




『With or Without You』U2

ドラムを始めた高校時代には、いくつかターニングポイントになるような出来事がありました。最も大きな分岐は、クリスチャンになったことでしょう。それまで宗教とは無縁の生活をしてきて、「信仰」という得体の知れないものを受け入れるか否か、大変悩みました。1人で散歩しながらどうするか考えていた時、リピートして聞いていたのがこの曲です。何の気なしに選んだつもりだったのですが、この選曲の時点で僕の未来は決まっていたように思えます。

『バイバイサンキュー』BUMP OF CHICKEN

高校時代のターニングポイントは、前述した「クリスチャンになったこと」の他に、「僕の卒業を待たずして母親が家出をしたこと」があります。幼い頃に思い描いていた「大人になりたい」という希望が、「大人にならなければならない」という責務に変わったのです。「家を出る前に演奏を聞いてほしい」と思い、友人たちに協力してもらって演奏したのがこの曲です。子どもの僕が最後に演奏した曲と言えます。

『安らぎの家』スティーリー・ダン

鳴かず飛ばずのバンド活動を経て、僕は音楽講師を志します。「講師になるには実力も知識も足らない」ということで専門学校へ入学したのですが、その際、入学試験の自由曲として演奏したのがこの曲でした。バーナード・パーディのドラムが完璧過ぎるので、あえて何も加えず、ほとんどオリジナル通りに演奏しました。これが試験官に好評だったのか、僕は特待生として奨学金を得ます。初めてドラムで結果を残せた瞬間でした。

『Yagibushi~Revised Version~』山中千尋

専門学校の入学試験同様、海外大学へ留学する際にも自由曲演奏のオーディションがありました。ヨーロッパの大学でコンテンポラリージャズが盛んだったため、「高度なテクニック」「変拍子」「日本らしさ」をアピールできれば受けが良いのでは、という思惑でこの楽曲を選びました。ドラムはジェフ・テイン・ワッツ、後に大学で研究することになるドラマーです。オーディションも成功し、海外への第一歩となった曲でした。

『The Last Ship』スティング

高校でドラムを始めた時から、僕にとってスティングはヒーローでした。ポリス時代から名曲ばかり作ってきた彼ですが、ある時、曲が書けなくなるスランプに陥ったことがあるそうです。そのスランプを脱して書いたのが、幼少時代を過ごした造船所のモチーフとしたこの楽曲でした。これまでずっと過去を振り返ってきましたが、スティングのように、過去を未来に昇華させる時が来たのかもしれません。

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