YouTubeにて、『一度聞いただけでお金が稼げる音楽』みたいな動画が投稿されていました。「稼ぐ」の主格（誰が）が明記されていないため、数学的には正しい表記と言えます。コメント欄を見ると、「この動画のおかげで臨時収入が入りました！」「数えきれないくらいお金が舞い込んできました！」という文が並んでいます。前者はタイトルと同じく主格が不定ですし、後者は単に算数が得意でない人という可能性がありますが、おそらく、コメント欄は承認制になっていて、動画投稿主のお眼鏡に適ったものだけを掲載しているのでしょう。
「ばかみたい」と感じた方が多いかと思いますが、世にあふれている情報の大体は似たようなものです。なんのソース（出典）もない文章が、いわゆる「ネットニュース」と呼ばれる記事となり、さも事実のように取り沙汰されています。否、ソースがあっても危険な記事はあります。たとえば、アイルランドに住んでいる日本人が、
「アイルランドは英語が通じないため、アイルランド語を学ばなければならない（参考『駐日アイルランド大使館 アイルランドの文化』※別リンク）」
みたいな投稿をしたとしましょう。リンク先を見ればわかりますが、「アイルランドの第一公用語はアイルランド語である」とはっきり書かれています。
しかし実際は、アイルランド語を使っているのはごくわずかな人（主に年配）だけで、ほぼすべての人が英語を使っています。これも前述したリンク先をよく読めばわかりますが、アイルランド政府はアイルランド語を「積極的に奨励」しているだけで、実のところ広まっているかいるかどうかは言及していません。駐日アイルランド大使館が出しているオフィシャルな記事ですが、せいぜい「嘘は書いていない」程度の記事なのです。それを僕が指摘したとしても、世間はオフィシャルな情報を信じるでしょう。たかだか数年アイルランドに住んでいた一介のミュージシャンよりも、オフィシャルなソースの方が信ぴょう性が高いからです。
『一度聞いただけでお金が稼げる音楽』を聞きながらここまで書いてきましたが、突然百万円の札束が上から落ちてきました！ 本当です！ 信じてください！
