ポートレート・イン・ジャズの思い出

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「ポートレート・イン・ジャズ」は、ピアニストのビル・エヴァンスの作品。前回(『はじめてのジャズ』)の最後でも触れたけれど、櫻井がドラマーになったきっかけのアルバムである。

何かの雑誌に書いていたけれど、日本で最も売れたジャズのCDは「カインド・オブ・ブルー(マイルス・デイビス)」で、それに次ぐのが「ワルツ・フォー・デビー(ビル・エヴァンス)」らしい。初めて借りたジャズのオムニバスにも「ワルツ・フォー・デビー」が収録されていたし、ビルの一番の代表作と言える。しかし、当時の櫻井少年(中学生)にそんな知識はないため、「店に置いてあるビルの作品で、最も収録時間の長いものを借りよう」と手にしたのが「ポートレート・イン・ジャズ」だった。

当時はテーマもアドリブもインタープレイも知らなかったけれど、「聞いているだけで格好がつく」と櫻井少年はご満悦だった。特に、アルバムの最後を飾る「ブルー・イン・グリーン」がお気に入りで、毎晩寝る時に流していた。その後、マイルスの「カインド・オブ・ブルー」を借りたけれど、このアルバムにも「ブルー・イン・グリーン」が収録されていて、やはりお気に入りとなった。

「ポートレート・イン・ジャズ」のクレジットを見ると、ビルの他にスコット・ラファロというベーシストと、ポール・モチアンというドラマーがいるらしかった。ラファロのベースは聞こえる(といってもベース・ソロの時だけだ)けれど、モチアンはシャンシャン(フット・ハイハットとブラシのレガート)しているだけだと思っていた。「こんなんやったら俺でもできるわ」とモチアンを下に見ていたのが、ドラムを選んだ理由の1つである。

高校生になってドラムを始めた時も、櫻井はジャズ・ドラムがやりたかった。ジャズの教本に「最初は『オータム・リーブス(枯葉)』が基本」みたいなことが書いてあったが、当時櫻井が持っていたオータム・リーブスは「ポートレート・イン・ジャズ」のバージョンのみだったため、「まじかよ、これが基本か」と絶望した覚えがある。ブラシを買ってドラムの先生に「教えてくれ」と頼んだら「無理」と断られたのもこの時期だ。櫻井がジャズに手を染めるのは、それから8年以上先のことである。

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