カニの殻

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30歳になって、生まれて初めてカニを食べた。足が数本と、その付け根らしきパーツが殻ごと皿に盛られていて、昔テレビで見たままの光景だった。一緒にいた友人はカニに食べ慣れているらしく、どうやって食べるのか指導を仰いだところ、足を割って身を引き抜き、「カニス」と呼ばれる淡くベージュがかった液体に浸して食べるらしい。

早速足を割って引っ張ったが、出てきたのは魚の骨のような物体だった。カニに骨は入っていないのでこれは偽物だな! と思ったら、どうやらこれはカニの筋(すじ)らしく、身はもう片方にごっそり残っていた。「残った身はこれで取る」と友人が渡してきたのは、先端の折れ曲がった裁縫道具のような食器だった。残ったカニの身を取り出すためだけに考案された道具であるらしい。箸じゃ駄目だったのだろうか。

苦労して取り出した割に、中身はカニカマ1本分にも満たない。1口で平らげる。この手の高級料理にありがちな、薄く澄んだ味だった。それを足の数だけ繰り返す。結局、櫻井がカニの身を綺麗に引き抜くことは1度もなかった。

上手く食べられなかったせいか、食べ終わってからだんだん腹が立ってきた。わざわざ殻をつけたまま皿に盛る意味がわからない。魚と包丁を差し出す寿司屋のような対応である。人件費を削減しているつもりなのだろうか。友人は「自分で殻を剥くから美味いんだ」という風なことを言っていたが、正気の沙汰ではない。寿司も自分で握った方が美味いと信じているのだろうか。

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