ミステリーのルール

多くの場合、殺人事件が起こるので、サスペンスやホラーと混同されやすいのですが、いわゆる「推理もの」と呼ばれる物語のジャンルの一種です。厳密なミステリーには、いくつかルールがあり、有名なものでは、「探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない」「探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない」といったルールを設けた「ノックスの十戒」が挙げられます。単に「謎の提示と謎の解決」だけの場合は、「ミステリー風」と表現されることが多いです。

しかし、このノックスの十戒は、1928年という、古い時代のルールです。現在では、10個すべてを守ったミステリーの方が少ないでしょう。世界で最初の推理小説と呼ばれる、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人(1841年)』ですら、この十戒を守れていません。

では、現代でも通じるミステリーのルールとは何か、僕なりに考えてみました。

○謎が物語の主題として提示されること

ただ事件が起きるだけでは、ミステリーになりません。「誰が(フーダニット)」「どうやって(ハウダニット)」「どうして(ホワイダニット)」というような、疑問(謎)が読者(視聴者)に提示される必要があります。事件は、殺人に限られたものではありませんが、何らかの犯罪性を持ったものが望ましいとされています。つまり、「櫻井ティモの前に突如として現れた謎の少女の正体とは?!」程度の事件では、誰の迷惑にもなっていないで、ミステリーとは言いにくくなります。

しかし、「櫻井ティモが突如として少女になった?!」であれば「誰が何の目的でどうやって」という謎が提示されています。櫻井ティモに対する傷害罪と名誉毀損罪も発生しているため、条件は満たしています(櫻井ティモ当人が公然わいせつ罪になりそうですけれど)。



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○探偵役・助手役が登場すること

意外とこれが、「ミステリー」と「ミステリー風」の最大の違いかもしれません。探偵役は、謎を解決する人のこと、助手役は、探偵役に疑問を投げかける人のことです。探偵役は、実際に探偵職である場合が多いですが、職種は様々です。物理学者でも良いですし、身体が縮んだ小学生でも可能です。助手役は、何人いても構いませんが、探偵役は1人であることが望ましいとされています。重要なのは、「探偵役ひとりで謎を解決してはならない」、つまり、「探偵役の自問自答ではミステリーにならない」ということです。

○謎を解く手がかりが提示されること

いわゆる、ヒントになる情報のことです。「現場に残されていた凶器」のような明確なものや、「Aさん(見た目は女性)のトイレ使用後は、便座が上がったまま」という、さりげない情報などが挙げられます。いずれも、「探偵役が推理を披露する前に提示されること」が条件となります。読者をあえて間違った推理へと導く、ミスリードと呼ばれる手法もありますが、いずれの情報も、論理的矛盾が生じてはならないことが重要です(次項参照)。

○すべての登場人物が各々論理的思考に基づいて行動していること

論理的思考とは、「理に適った、筋の通った考え方」のことです。論理的であるかどうかの判断は、登場人物自身に委ねられ、現実的である必要はありません。ただ、「あいつが私にハンガーをぶつけたから殺してやったのよ!」みたいな突飛な思考では、読者の共感を得られないでしょう。一般的に「良いミステリー」と評価されるのは、謎の派手さよりも、この論理性が優れているかどうかで決まります。

○謎が解決されること

提示された謎に対し、探偵役が推理を披露し、疑問を解消する機会を設けることです。あくまで「謎の解決」であって、「事件の解決」ではありません。最低でも、「誰が」「どうやって」「どうして」は解決されなければなりません。ちなみに、この3つの中で最も解決しにくいのは「どうして」で、謎が派手になればなるほど解決の難易度が上がります。

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