音楽講師業を始めて予想外だったこと

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基本的に櫻井は先読みをするタイプである。いわゆる「その場しのぎ」が苦手なので、現時点で考えられる今後のシチュエーションやトラブルを予想し、対策を練っている。音楽講師業も例外ではなく、始める前から「こういう需要があるだろうな」とか「こういうトラブルが多いだろうな」という予想をいくつか立てていた。今回はその中で、当たらなかったもの、予想外だったものいくつか挙げる。

◯プロ志向の生徒様が1人もいない

櫻井が勤めている楽器店附属の音楽教室は、どちらかと言えば「プロを育てる」より「購入した楽器を長く楽しんでもらう」ということに重きを置いている。プロを目指している人は軽音部や吹奏楽部に所属したり音大や専門学校へ進学したりするだろうから、楽器店附属の音楽教室に来ることはほとんどない、という予想はしていた。

それでも、吹奏楽部がない学校に通う人や音大、専門学校の受験対策する人が1人か2人くらいはいると考えていた。櫻井が音楽講師になって3年、体験レッスンや短期レッスンも含めて200人くらい教えたけれど、「プロになりたい」という人は1人もいなかった。口にしていないだけかもしれないけれど、それにしても少ない。

◯ヘビー・メタルの需要がほとんどない

レッスンでどんなジャンルの楽曲に需要が集まるか想定した際、「ヘビー・メタル」は5指に入る人気ジャンルだと櫻井は予想していた。もっと速く、もっと大きく叩くためのテクニックを求める生徒様が1クラスに1人はいると思っていたのだ。そのためにツイン・ペダルを購入し、前もって備えていたのだけれど、希望者は過去に2人くらいしかいなかった。あまり人気がないと思っていたジャズの方が倍くらい需要がある。

ちなみに、残りの4指は「邦楽バンド」「アニソン」「オールディーズ」「アイドル曲」で、だいたい当たっていた。しかし、ヘビー・メタルほどではないにせよ、予想していたよりも少なめであった。

◯いわゆる「モンスターペアレント」がいない

モンスターペアレントとは、教育機関に対し過度な欲求や暴力的行為に及ぶ保護者のこと。端的に言うと、自分の子どもを利用して個人や組織を攻撃する悪質クレーマーである。接客業では言いがかりをつけるクレーマーが必ずいるので、モンスターペアレントも必ず出てくると思っていたが、今のところ、そのようなケースには遭遇していない。みな理知的で、尊敬に値する親御さんばかりである。

ただ、これに関しては櫻井の予想は外れていないと考えている。これまでは櫻井の運が良かっただけで、今後モンスターペアレントは必ず現れると思っている。そうなった時にどうやって生徒様を守るか、今のうちから考えておく必要がある。

◯音楽に無関心の生徒様がいる

たぶん、数ある予想外の中で一番驚いたことだと思う。「楽器を習いにくる人は音楽に興味がある」と当たり前のように櫻井は考えていたけれど、「好きな楽曲やアーティスト、ジャンルがない」「普段から音楽を聞いていない」「音楽的な目標がない」という人がいるのだ。それも1人や2人ではなく、2割くらいの人が音楽に関心がない。

音楽に興味がないのにどうして楽器を習うのか。「我が子に楽器を習わせたい」という風に、生徒様本人ではなく保護者の希望である場合も稀にあるけれど、一番多いのは「音楽に興味はないけれど、楽器が好き」というケース。スポーツ・ジムみたいな感覚だろうか。間違ってはいない。どんな理由であれ、楽器を弾くのは自由である。

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