二天一流に学ぶ、実戦的なドラムのテクニック

二天一流」は、かの剣豪宮本武蔵の剣術で、長い太刀と短い脇差の二刀を同時に扱う「二刀流」が有名な流派です。生涯負けなしと謳われるほどの強さを誇る武蔵の流派ですし、一般的な剣術よりも刀が倍ですから、それはそれは強いのだろう、と思われるかもしれません。

しかし、剣道の大会などを見ると、二刀流の選手はほとんどいません。年齢制限があり、指導者が少ないのも原因ですが、そもそも強くないからあまり広まらないわけです。

二刀流が強くないとされる要因は主に2つ、「振りの遅さ」と「打突の弱さ」です。1本の刀を片手で扱うわけですから、両手を使うのに比べると刀を振る速度が遅く、かつ振った後に隙が生じやすくなります。後者も同様で、両手で打つよりもパワーが落ちるため、有効打になりにくいのです。

もちろん、達人の域に達すれば二刀流でも素早い強打は可能ですが、その人は両手で一刀を持てばさらに強くなるわけで、二刀流にするメリットは防御が硬くなるくらいだなあ、と思っていました。

ところが、武蔵が書いた『五輪書』に、「二天一流の真髄は二刀流ではなく、片手で一刀を扱えるようになることにある」という風な記述があることを最近知りました。たとえば馬に乗っていたり、大将の首を持っていたりするなど、実際の戦場では片手で刀を振らねばならないシチュエーションが多くあるため、両手で一刀を扱うのは実戦的ではない、と言うのです。



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また、当時の武士の権威(あるいは見栄)の象徴だった脇差を、飾りではなく実用することを武蔵は説いています。広い場所では太刀を、狭い屋内では脇差を、フィールドや相手に応じてフレキシブルに二刀を使いこなすのが核であって、必ずしも二刀流にする必要はないわけです。ルールのある剣道の試合ではなく、実際に使える「超実戦主義」が二天一流なのです。

これをドラムのテクニックに置き換えるなら、太刀はシングル・ストローク、脇差はダブル・ストロークです。細かいテクニックは多くありますが、詰まるところ、ほぼすべてのドラム・テクニックはこの二刀に集約されます。ルーディメンツで「ラタマキュー」やら「トリプルラタマフラム」やら覚えても、結局実戦で使えるのはシングルとダブル、2つのストロークです。

ちなみに二天一流の刀の持ち方は、親指と人差し指はフリーの状態にし、中指でコントロールしつつ、薬指と小指でホールドするそうです。実はこの持ち方、ドラマーのトニー・ウィリアムスのフォームと酷似しています。たぶん「オウ、『ゴリンノショ』スッバラシーネー」と影響を受けたか、もしくは前世が宮本武蔵だったのでしょう。さっそく真似してみたところ、叩き辛くて演奏どころではありませんでした

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