音楽的とは何か【その1】

ミュージシャンのクリニックやインタビューを見ていると「音楽的に演奏することが重要」という発言をよく目にします。たしかにその通りだ、と今まで聞き流していましたが、音楽的とは具体的にどういう現象なのでしょうか。

音楽的という言葉は、技術的理論的といった言葉とたびたび対比されます。技術や理論の対極にあるのはセンスや感覚とされていますが、センスや感覚を数値化、単純化したものが技術と理論であるため、双方は対立しません。ゆえに、音楽的であることは、技術的、理論的であることと対立しないのです。よって、音楽的に演奏する技術、ならびに理論は存在します。

では、具体的にどんな技術、理論があるのでしょうか。音楽を構成する3要素はメロディ(旋律)、ハーモニー(和声)、リズム(律動)です。心地よいメロディ、ハーモニー、そしてリズムを持っていることが音楽的な演奏の条件と言えます。

◯メロディ

メロディは音楽の言語です。脚本に書かれた台詞のようなもので、そのシーンに合っているかどうかが重要になります。また、文法の正確さよりも「そのキャラクターに適しているかどうか」が大切です。シリアスなヒューマンドラマで、病にふせったヒロインが死の間際に親父ギャグを言ったら台無しでしょう。ヒロインの名前を叫んで泣き崩れるのが横に立っていた担当医だったら「お前かーい!」と突っ込まざるを得ません。

音楽の場合、台詞は「フレーズ」であり、キャラクターは「ポジション」です。メロディというとボーカルやリード・ギターの担当、というイメージがありますが、ベースやドラムにもメロディがあります。ただ、主役をとっているのがボーカリストやギタリストなので、彼らと同じような台詞(つまりフレーズ)は基本的に喋られない、ということです。



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「基本的に」と書きましたが、映画と違って音楽は展開によってポジションが変わります。否、映画だって脇役が活躍するシーンはあります。いわゆる「見せ場」のことです。脇役は、見せ場になったら活躍しなければなりません。台詞を身につけるだけでなく、楽曲の中で自分の見せ場はどこなのか見極めることも重要です。

例ではシリアスなヒューマンドラマとしましたが、これに相当するのは「ジャンル」です。死の間際に親父ギャグを言うヒロインも、主役を食ったような脇役も、シリアスなヒューマンドラマだから許されないだけで、コメディ映画だったら許されます。そのジャンルにはそのジャンルに則した言語、台詞、フレーズがあります。歴史を学ぶことも大切なことです。

しかし、ジャンルに則したから面白くなるかといえば、そうとも言えません。たとえば、『グッドモーニング、ベトナム』という戦争映画は、兵士ではなくラジオのDJが主役ですし、ロビン・ウィリアムズのコメディな演技が中心です。「戦争+コメディ」という、とんでもないボーダーレスな映画ですが、大変売れました。時代が「良い」と判断したのです。ジャンルではなく、時代に則するべきなのかもしれません。

次回へ続く。

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