プロとアマの演奏の違い

プロは「熟練者」という意味の「プロフェッショナル(professional)」、アマは「素人」という「アマチュア(amateur)」の略称です。この2つを比較するためには、まず、「プロとは何か」「アマとは何か」を定義しなければなりません。「演奏が上手ければプロ、下手ならアマ」という風に演奏技術で比較されることが多いですが、この場合「上手いとは何か」「どこまでが下手なのか」も定義しなければなりません。演奏技術の良し悪しは個人の感覚であり、感覚は具体性に欠けます。具体性の欠けたものは明確化できないゆえに定義できません。よって、客観的に評価できるものによってプロとアマの違いを定められなければならないでしょう。

仕事における最大の客観的評価は「金銭」です。これは、ミュージシャンに限らず、すべての職業に当てはまります。その仕事によって対価を得ているかによって、プロかどうか決まります。「生計を立てられるようになれればプロ」という定義もありますが、これだと学生のアルバイトはすべてアマということになってしまいます。そこで今回は「継続した収入が1年以上続いていればプロ、そうでなければアマ」という定義で話を進めていきたいと思います。

プロとアマの違いを収入の有無によって定義しましたが、両者の演奏にはどのような違いが見られるでしょうか。 結論を言うと「大した違いはない」です。冒頭に書いた「演奏の上手い下手」に関しても、プロより上手いアマもいれば、アマより下手なプロもいます。「プロの演奏は人を感動させる」は錯覚なのです。そう、この点がプロとアマの演奏の違いなのです。つまり、「プロの演奏は聴衆に幻想を抱かせる」のです。

技術的に上手なことをやっているわけでもないのに、聞いている人に「やっぱりプロは違う」と勘違いさせる技術をプロは知っています。アマにもできるような単純な技術ですが、アマはその技術を知りません。頭で理解しているつもりでも、実践できないのです。どれだけ下手なプロでも、この技術だけは知っています。また、どれだけ上手くてもこの技術を知らなければプロにはなれません。その技術とは、「ミスへのフォロー」です。



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まずプロは、ミスとは何か知っています。演奏中でも「ミスした」と状況把握できます。これくらいならアマでもできるかもしれません。しかしプロは、そのミスを聴衆に悟られないようにフォローできるのです。「フォローできるのは演奏技術があるからでは」と思うかもしれませんが、演奏技術があるならそもそもミスをしません。「ミスした」と状況把握できるアマがそのままミスをしてしまうのは、ミスした後でフォローしようとするからです。それでは遅すぎるのです。ミスする前にミスを予測し、その対処法を用意した上で演奏にのぞみ、実践できて初めて「ミスをフォローできた」と言えます。

ミスをフォローできるようになれば、音楽でプロになるのは容易いでしょう。技術が上がれば上がるほど収入は増えていきます。しかし、大した金額にはならないでしょう。それは、ミュージシャンという仕事が他の仕事に比べ、ミスが許される仕事だからです。「音楽に命を懸ける」と口にするミュージシャンがいますが、実際に命を懸けているミュージシャンはほとんどいません。他人の命を預かる医者と同じスタンスでステージに立てるミュージシャンはいないでしょう。

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