ドラム講師がドラムのチューニング方法を教えない理由

専門学校時代、ドラム科のある生徒がこんな愚痴をこぼしていました。

ドラムのチューニング方法を授業で教えないなんて、うちの学校のドラム講師は間違っている」

悪意のある言い方はともかく、そんなおかしなことがあるだろうか、と少し疑問に思いました。そこで、その週の個人レッスンの際、ドラムの先生に、「チューニングについて教えてください」と訊ねました。すると、その先生は、懇切丁寧に教えてくださいました。名誉のために言っておきますが、僕が習ったドラム講師は、国内外含め全員、講師として一流でした。訊かれて答えない、という事態は、まず起こらないでしょう。

では、どうしてこのようなすれ違いが起きてしまったのでしょうか。確かめる前に、その生徒は学校をやめてしまったので、真相はわからなくなってしまいましたが、おそらく、自分から先生に訊かなかったのではないでしょうか。推測の域を出ませんが、ようするに、「こっちが頼まずとも教えろよ」というのが生徒側の言い分だったと思われます。



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たしかに、「生徒が訊ねる前に、教師が教えるべきこと」はあると思います。たとえば、演奏時の姿勢(フォーム)がこれにあたります。間違ったままのフォームでは、健康に影響が出るからです。しかし、ドラムのチューニングは、そういった危険がありません。そもそも、ドラムのチューニングとは、弦楽器などのそれと違い、音程を調整するものではなく、音のキャラクターを作るものです。弦楽器でいえば、音色作りに相当します。これは、すべての楽器に言えることですが、実力がなければ、いくら良い音色を作っても発揮されることはありません。音色とは、いわばホースの径であり、いくら管を広くしても、そこに流れる水量(実力)が低ければ意味がないのです。

もちろん、講師であれば、ホースの径の広げ方を把握しています。どんな形の径が、どんな水流(スタイル)に合っているかも理解しています。しかし、何よりも水量を増やすことが先決であることも知っているのです。僕が師事した最初の先生は、こちらから訊く前にドラムのチューニングについて教えてくださいましたが、それも3年という長い期間の中での、ほんの数時間です。ちなみに、当時の僕は「先生の音は好きになれん」の一言で全く聞く耳を持っていませんでした。若気の至り。

ドラム講師がドラムのチューニング方法を教えない理由は、「生徒が訊かないから」、あるいは、「間違った訊き方をしているから」です。あらゆる「〇〇(楽器)講師が××(〇〇に関すること)を教えない理由」が、この一言で解決するでしょう。しかし、今後は「訊けない生徒」が主流になってくるのでは、という予感があります。

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