もしもあの有名人の才能を自分のものにできたら

僕は幼稚園に入園した時からずっとゲームが好きで、1人でいる時はたいていゲームボーイで遊んでいました。脇目も振らず、一心不乱にゲームをしている僕を案じて母は「ゲームは1日1時間」という制約を設けました。もちろん、素直に従う僕ではありません。鬼の居ぬ間に洗濯よろしく、母が眠った後にこっそり布団の中で懐中電灯を使ってゲームをしていました。今のゲーム機やスマホの液晶には当たり前のようにバックライトがついていますが、当時のゲームボーイは懐中電灯で照らさないと画面が見えなかったのです。おかげで僕の視力は小数点第2位まで落ち込んでいます。

ゲームに関することだったら何でも積極的になる僕が、ある時「プロアクションリプレイ」という機材を知りました。ハードとソフトの間に差し込み、ソフトのコードに手を加える改造ツールです。噛み砕いて言うと、所持金やステータスをマックスにしたり、好きなだけアイテムを入手できたりするよう、データを書き換える道具です。データの書き換え、なんて言うと専門的な知識が必要そうですが、プロアクションリプレイは誰でも簡単にコードをいじれるのが売りでした。現に当時小学生だった僕も使えていたのです。

僕がプロアクションリプレイを購入した時は、ポケモン(初代)が社会現象になっていたころです。みんながあくせくポケモンを集め、レベルを上げている間、僕はコードをいじっていました。どんなポケモンもステータスを限界値まで上げられるので、向かうところ敵なしです。幻のポケモンと呼ばれるミュウも作り放題だったため、友人の何人かに配ったこともありました。まさに、最強をほしいままにしていたのです。



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その後、僕は突如ゲームをやめてしまいました。いつでも好きなアイテムを手に入れられたり、勝負する前から勝つことが決まっていたりするのが、急速につまらなくなったのです。プロアクションリプレイを使わなければ楽しめるかと思いきや、1度楽な道を知ってしまうと、普通の道がとんでもなくバカバカしく思えてしまったのです。手軽に手に入れた力は深い退屈を植え付ける、ということです。

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