「海外の大学で首席」の真実

日本の大学で首席というと「1位の成績」という意味になりますが、海外の大学では「良い成績」という意味になります。たとえば、「100点を取ったAさん」と「98点を取ったBさん」がいたとして、日本の大学で首席と呼べるのはAさんだけですが、海外の大学ではAさんもBさんも首席として扱われます。つまり、複数の生徒が首席を取れるわけです。

なぜそんなことになってしまうかというと、海外の評価は良い順に「First Grade」、「Second Grade」という風になっていて、この「First Grade」が「首席」と和訳できてしまうからです。相対的評価ではなく、絶対的評価に基づいているわけです。わかりやすく言うと、小学校の5段階評価で5を取った生徒は全員首席である、というのと同じです。

僕が卒業したニューパーク音楽大学(以下、ニューパーク)では70点以上で「First Grade」 、つまり、首席とみなされます。100点の生徒も70点の生徒も、どちらも同じ首席なのです。大学によって基準は異なると思いますが、「○点以上取れば首席」という点は共通しています。よくある「海外の○○大学を首席で卒業」というプロフィールは、「学年で1位だったんだ」と思われがちですが、実際は70点の成績で、その人よりも良い成績を取った人が複数いた可能性も大いにあるわけです。



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ニューパークの場合、70点以上というのは「出された課題をある程度こなせれば誰でも取れるレベル」です。授業で教わったことだけを、そのまま試験でやれば首席が取れるわけです。たとえば、ソロをコピーする「トランスクリプション」という試験では、「4分前後のソロを1曲コピーし、演奏する」だけです。誰のソロをコピーするのか決めるのも自分です。アレンジしてソロを考える、といった独創性も求められません。「コンポジション(作曲)」の試験も、「1番、2番、3番と同じことを繰り返さない曲」を作れば70点、つまり首席が取れます。難しい点といえば、「アイディアが出てこない」くらいですが、その場合は先生に訊けばアイディアをもらえます。

「出された課題をこなす」というのは実に日本人向けのタスクで、日本人であるほど海外の大学で首席を取りやすいと言えます。海外の人(本当は日本人こそ外国人なのですが)ほど「課題を無視して自分のやりたいことをやる」という傾向が見られます。音楽的には良いことをしているのですが、良い成績は取れないのです。ニューパークのロナン学部長は僕のことを「イグザム・モンスター(Exam Monster)」と言っていましたが、もちろん褒め言葉ではないですし、日本人の大半はモンスターです。

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