MM殺人事件【推理編】

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「えっ、本当ですか?!」
「ああ。まず、この現場を見て何か気になることはないか」
 ポールはあたりを見渡すが、横たわった死体と血文字のダイイングメッセージくらいしか見当たらない。
「気になるも何も、手がかりになるようなものはこのダイイングメッセージしか残されていませんよ」
「それだ」アダムは人差し指を突き出した。「どうしてダイイングメッセージが残っている?」

「どうしてって、被害者が死ぬ前に書き残したからでは?」
「現場からは弾が見つかっていないし、被害者の部屋なのに被害者の指紋が検出されなかった。つまり犯人は、犯行後に痕跡を処理していることになる。そこまで用心深い犯人が、被害者のダイイングメッセージに気がつかないと思うか?」
「言われてみれば、たしかに……」
「犯人は被害者の残したMMの意味を理解できず、名前のイニシャルだと勘違いした。罪をなすりつけるために、犯人はあえてダイイングメッセージをそのままにしておいたんだ」

「そのMMの意味っていうのはなんなんですか?」
「被害者は作曲家なんだろ? 作曲家でMMとくれば、速度を表す『メルツェルのメトロノーム』のことさ」
「メトロノームって、あのカチカチ音が鳴るマシンのことですよね。正確なテンポを出すマシン……ってことは、犯人は指揮者のウォルター?!」
「指揮者だったらMMが速度記号であることくらい当然知っている。それに、MMは見方を変えればWWにも見えるし、EEに見えなくもない。マリア・ミラー(Maria Miller)、ウォルター・ウイリアムス(Walter Williams)、エドワード・エリントン(Edward Ellington)、いずれの容疑者にとっても残したくないメッセージだったはずだ」
「そうか、彼らが犯人だったら、MMというダイイングメッセージを残しておくと嫌疑がかかってしまいますね」
「そう、つまり犯人は名前にMもWもEも入っていない、かつ、音楽の知識にうとい人物ということになる。それより」
 どうしてさっきから何も言わないんだ、とアダムは言った。
「それに、音楽はさっぱりらしいな、ハンス刑事」

 最終回へつづく。

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