童話「桃太郎」のさわりとは

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童話「桃太郎」のさわりの部分はどこかと訊かれて、「おじいさんは山へ柴刈に、おばあさんは川へ洗濯に」や「どんぶらこと桃が流れてきた」というシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない。この「さわり」という言葉は、「ストーリーの冒頭部分」という誤用で有名だけれど、実際は「ストーリーの重要な部分」という意味だ。ミステリー作品でいえば「犯人は乗客全員」とか「銀行強盗するためにそっくりさんを雇った」といった、いわゆる「ネタバレ」がこれに相当するのではないか。

桃太郎のあらすじは以下の通りである。

1. 桃から桃太郎が生まれ、おじいさんおばあさんらによって育てられる。
2. 成長した桃太郎が村のために鬼退治の旅に出る。
3. 旅の道中、きびだんごを用いて犬、猿、雉を雇う。
4. 鬼ヶ島にて鬼を成敗し、村に財産を持ち帰る。

ではこの中で、桃太郎のさわりとはどのシーンを指すのだろう。育ててもらった恩を返すことを決意するシーン2を選ぶ人もいれば、正義のために悪を成敗するシーン4を選ぶ人もいるだろう。櫻井は、鬼を退治できるほどの武力を使わずにきびだんごという財力で平和的に手下を従わせたシーン3こそさわりであると思う。

タイトルが「桃太郎」だから、桃から生まれるシーン1がさわりであると考える人もいるだろう。たしかに、大きさでいえばスイカ太郎の方がリアルだ。キャベツの方が水に浮きやすいからキャベツ太郎でも良い、という理屈が通ってしまう。つまり、話の冒頭部分が本当の意味でもさわりになるわけだ。うっかり誤用してしまった時の言い訳に使えるかもしれない。

ところで、「さわり」のように本来の意味よりも誤用が広まっている言葉は、本来の意味で用いるとかえって誤用扱いされることがある。一般化された誤用は、もはや誤用ではないのでは。

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