顔形の整った男性や、いわゆる「男らしい態度や行ない」に送られる賛辞のことです。現代語訳すると「イケメン」ですが、僕が観察した限り、年代が上の人ほど「男前」を用いることが多いようです。端的に言うと、男前と使っているか否かでおじさん(おばさん)かどうか判別できます。元は歌舞伎の言葉らしいので、江戸時代からタイプ・スリップしてきた女子高生は「嵐はみんな男前やわあ」みたいなことを口にするかもしれません。
以前に書いたブログ『イケメン』にも書いたことですが、男前もイケメンも、男性に送られる賛辞であり、女性に用いられることは滅多にありません。ごくまれに、男性的な言動や行動をした女性に対して「男前だ」と言うことがありますが、これは賛辞というより揶揄でしょう。「姉御肌」は賛辞になるかもしれませんが、これもいわゆる「女性らしい態度や行ない」に対しての賞賛ではありません。「美女」も外見にのみ言及した賛辞です。
「男前」に相当する、女性への賛辞の言葉には何があるかを考える前に、女性らしさとは何かを考えてみましょう。「料理ができる」「慎ましい態度」のようなステレオタイプはいくらでも出てきますが、これらは全て男性目線の女性らしさです。たとえば、料理ができる男性を「女性らしい」とは言わないでしょう。賛辞されるべき女性らしさとは、異性だけでなく同性からも評価されるべき要素なのです。
そうはいっても僕は男性なので、女性の評価はわかりません。そこで、女性の友人に「女性らしさとは何か」と訊ねたところ、「玉の輿に乗るために愛想よく振舞っている様子を見ると、女性らしいと感じる」という風なことをおっしゃっていました。たしかに、昔から「男は度胸、女は愛嬌」と言われているように、愛想の良い女性は男性から見ても女性らしいと感じます。愛想が良いだけでは女性らしいとは言えませんが、これに「玉の輿に乗るために」という理由が付随しているとなると話は別です。玉の輿に乗るために愛想良くしている男性は、誰がどうみても女々しいでしょう。
以上のことを踏まえて、顔形の整った女性や、いわゆる「女性らしい態度や行ない」に送られる賛辞にぴったりな言葉が1つだけあります。玉の輿という自身の目的のために愛想を演出する女性を、世間一般には「ぶりっ子」と呼びます。そう、ぶりっ子は賛辞なのです。今後素敵な女性に出会ったら、こう言いましょう。「君って本当にぶりっ子だね」、と。