楽譜が読めないとプロのミュージシャンになれないのか

たとえば、「時間をかけてじっくり見れば書かれていることが理解できる」のように、「楽譜が読める」にもいろいろなレベルがあります。一般的には「楽譜を読みながら書かれている通りに演奏できる」くらいできれば「楽譜が読める」と言えるでしょう。重要なのは「読みながら」と「演奏する」という点です。楽譜をあらかじめ記憶するのではなく、読みながらそれを再現(演奏)する能力が必要になります。

しかし、楽譜を読もうが読むまいが、演奏さえできていれば音楽は成り立ちます。はじめに楽譜があって音楽があるわけではありませんし、楽譜を読まずとも演奏技術さえあればプロになれるのでは、と考えていらっしゃる方もいるでしょう。先に結論を述べておきますと、楽譜が読めなくともプロになれます。さらに言うと、高い演奏技術がなくてもプロにはなれます。ただ、それで生活できるほど稼げるかと言うと、答えは限りなくノーです。どんな職業にも共通して言えることですが、これができない、あれができないといった能力不足は、仕事の幅を著しく狭めてしまいます。

バンドでプロになるためには、曲を量産できなければなりません(参考『これからのバンドが売れるために必要な5つのこと』)。実際はもう少し複雑ですが、歌詞もアレンジも決めて月に50曲くらい作曲できれば十分稼げる可能性があります。つまり、年間600曲です。これだけ大量の曲を作り演奏するためには、楽譜が読めることが必須になるでしょう。もし月に5曲しか作曲できないと、単純計算で収入は10分の1になります。一発屋クラスに大当たりしない限り、生活できないでしょう。

スタジオ・ミュージシャンになって録音やライブのサポートに参加する場合、何度もリハーサルを重ねることはほとんどありません。リハーサルすればするほどスタジオ代がかかり、利益が下がるからです。デモ音源を用意してくれる人もまれです。多くの場合、楽譜だけでクオリティの高い演奏を求められるのです。週に1回くらいの頻度であれば何とかなるかもしれませんが、毎日何曲も演奏できなければ商いとして成り立たないでしょう。



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音楽講師の中には、楽譜を使わず口伝や身振り手振りだけで教えている人もいます。それで成功しているのですから、楽譜が読めなくとも講師業はできるように思えます。たしかに、バンドやスタジオ・ミュージシャンよりは可能性がありますが、相当なカリスマを要しますし、「楽譜を読めるようになりたい」という需要には応えられなくなります。また、大手音楽教室に所属するためには楽典の試験や初見演奏に合格しなければなりません。「読めるけど使わない」と「読めない」には雲泥の差があるのです。

ここ最近の新しい音楽ビジネスでは、いわゆる「演奏してみた」系の動画をネット上にアップし、広告収入を稼ぐ方法があります。楽譜が読めなくてもアイディアによって巨万の富を得る可能性がありますが、軌道に乗るまで途方も無い時間がかかりますし、ほとんどギャンブルと言っていいでしょう。たとえば、YouTubeで1日1万円稼ぐためには、毎日10万から20万回動画が再生されなければなりません(参考『アフィリエイト』)。それだけ著名になれば、別の仕事でもっと稼げるようになっているでしょう。

楽譜を読めるようになるのは簡単ではありませんが、楽譜を読まずに儲けるよりはずっと易しいのです。

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