今昔四弦物語

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むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ柴刈りにも行かず、ずっと家でギターばかり弾いていましたが、一、二弦だけ微妙にチューニングがずれていたり、クリーン・トーンと歪みの音量差が極端だったり、ソロでやたらとベンドしていたりしていました。一方、おばあさんは卓越したテクニックを持つギタリストで、歯でギターを弾いたり、サイレンの音を出したり、チューブ・スクリーマーを二台使ってコシのあるソロを弾いていたりしていました。

おじいさんの腕前は下手というわけではないのですが、一緒に暮らしているおばあさんと比較されては立つ瀬もなく、村での評判もおばあさんの一人勝ち。レコーディングや結婚式の演奏、同窓生が結成したベンチャーズのコピー・バンドなど、あらゆる依頼がおばあさんに集中しました。
「このままではまずい」そう思ったおじいさんは策を講ずることにしました。「なんとかしておばあさんよりも目立つ方法を考えなければ」

そうは言ってもテクニックではおばあさんに敵いません。そこでおじいさんは、誰も見たことのない、新しいギターを作ることにしました。まず、普通よりも約一.五倍長いネックを取り付け、弦も太く長いものに変えました。また、いつもチューニングがずれる一、二弦を外し、弦を四本にすることで安定した演奏を可能にしました。
「これほど大きなギターは見たことがない。きっとおばあさんよりも目立つに違いない」と、おじさんは思いました。

ところが、新しいギターを使い始めたというのにおじいさんへの依頼は増えるどころかさっぱりなくなってしまいました。どれだけパフォーマンスしても、見向きもされません。おじいさんの計画は、失敗してしまったのです。
「一体なにが悪かったのだろう」首をかしげるおじいさんに、おばあさんよりは言いました。「低音が出すぎているんですよ」

そう、おじいさんの新しいギターはネックも長く、弦も太いため、普通のギターよりもオクターブ低い音になってしまったのです。そのため、おじいさんが派手な演奏をしても「なんかモコモコしている」くらいにしか思われず、合奏になると「え、いたの?」と言われるほど存在感が薄くなってしまったのです。

一度改造してしまった手前、もう元には戻せません。落ち込むおじいさんにおばあさんは言いました。
「その新しいギターはきっと、将来アンサンブルの土台となる楽器になりますよ」

こうしておじいさんは新しいギターを「土台」という意味の「Base」と「低音」という意味の「Bass」をもじって「ベース・ギター」と名付け、「ベーシスト」と名乗ることで独自の世界を作りあげていったそうな。めでたしめでたし。



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