世界で最も他人の楽器を大切にできないミュージシャン

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たとえばあなたがギタリストで、ある時、あなたのギターやアンプなどの器材を、Aさんという人に貸したとしよう。Aさんはギターを受け取った瞬間、手を滑らせて床に叩きつけてしまう。ところが、Aさんはひとつも悪びれた様子がない。それどころか、アンプのボリュームを上げたままシールドの抜き差しをするわ、エフェクターのスイッチを思いっきり踏みつけるわ、挙句の果てには「好みの音が出ない」と言って、勝手に弦高を変えたり、配線をいじくったりする始末。最終的に弦を何本か切って、謝罪どころか「酷い楽器だった」と捨て台詞を吐かれて器材を返されたら、あなたはどう思うだろう。ギターじゃなくてもいい、自分の使っている道具をこのように扱われたら、誰だって頭にくるし、腹が立つと思う。しかし、これと全く同じことを、ドラマーは日常的に行なっている。ドラマーは間違いなく「世界で最も他人の楽器を大切にできないミュージシャン」である。

ドラムという楽器は、高価な上に場所を取るし、重量もある。スタジオやライブハウスなど、ドラムを演奏する場所にはドラムセットが常備されているのが普通なので、自分の楽器(ドラム)を持っているドラマーよりも、自分の楽器を持っていないドラマーの方が多い。つまりドラマーは、常設の器材、いわば他人の楽器を使うのが当たり前のミュージシャンなのだ。ピアニスト(ピアノ)や、強いて言えばボーカリスト(マイク)もこれに含まれるが、器材を粗末に扱うことにかけて、ドラマーは群を抜いている。いくつか挙げてみよう。

1. シンバルとタム、タムとバス・ドラムなど、楽器同士が接触している(本体が傷つく原因になる)
2. 極端に緩めたドラム・ヘッドのロー・チューニング(ヘッドの消耗が早くなる)
3. 逆に、極端に張ったドラム・ヘッドのハイ・チューニング(同上)
4. 1本だけ緩めたチューニング・ボルト(フープの歪みの原因になる)
5.過剰に締められたボルトやナット(パーツの消耗が早くなる)
6. 器材の落下、破損(説明不要)

以上のことは「禁止事項」である。また、ドラムは一種の共用楽器であるため、他人に迷惑をかけないための「注意事項」がある。2タムのドラム・セットを1タムで使用した場合、ペダルのセッティングやチューニング、ハイハットのクラッチ、スナッピーのオン・オフなどがこれに当たるが、いずれも「必ず元の状態に戻すこと」の一言で解決する。解決するはずなのだけれど、誰もこのルールを守らないので、そもそも「元の状態」にならない、という悲惨な現状が今もって続いている。

櫻井はドラムが嫌いで、楽器自体に何ら愛着も沸かないけれど、器材は丁重に扱うし、この現状には正直、憤りを感じている。これはドラムが好きとか嫌いとか以前に、「物を大事にする」というモラルの問題である。自分の物なら勝手にすればいいが、他人の物をぞんざいに扱うなど、愚の骨頂である。

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