レギュラー・グリップ

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ドラム・スティックのフォーム(握り方)の一種。普通、ドラム・スティックの握り方と言うと、左右の手で同じ持ち方をする「マッチド・グリップ」が一般的である。マッチド・グリップにも、手の甲が上を向く「ジャーマン・グリップ」、親指が上を向く「フレンチ・グリップ」などの種類があるが、手が左右対称の持ち方をしているのがマッチド・グリップの特徴である。

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■ジャーマン・グリップ

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■フレンチ・グリップ

一方レギュラー・グリップは、右手(利き手側)はマッチド・グリップ同様、5本の指で握るようにしてスティックを持つが、左手(もう一方の手)は親指と人差し指の根元でスティックを固定し、手の上に載せるようにして持つため、左右非対称になる。

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■レギュラー・グリップ

「Regular(標準)」という名前の割に、このフォームを用いるのはジャズ・ドラマーくらいである。では、なぜレギュラー・グリップという名前がついているか。もともとドラムという楽器は、スネア・ドラムのような単数の太鼓を演奏するものだった。今のドラム・セットのように複数の太鼓を用い始めたのは、ここ100年ちょっとの話である。で、単数の太鼓を演奏する際には、左手の持ち方、いわゆる「レギュラー持ち」の方が適しているとされ、長く使われてきたから、レギュラー・グリップという名称なのである。しかし、レギュラー(標準)でないのにレギュラー・グリップという名称は紛らわしいので、そろそろ「トラディショナル・グリップ」に統一すべきでは、とは思う。

レギュラー・グリップはスティックを下からすくうようなフォームのため、「バウンドを拾いやすい」というメリットがあるとされている。逆に、腕の重みを利用しにくいフォームであるため、「パワーが出にくい」というデメリットが挙げられることがある。「バウンドが拾いやすいなら、両手レギュラー持ちにすれば良いのでは?」と思うかもしれないが、小太鼓ひとつならともかく、複数ある打面に高低差や距離のあるドラム・セットではかえって演奏し辛くなってしまう。そして、後者の理由が致命的で、今日のポピュラー音楽を演奏するには、どうしてもパワー不足が否めない。ある程度コツを掴めばそれなりにパワーも出るのだけれど、マッチド・グリップの方が容易く、かつ大きな音を出しやすい。つまり、音楽的には「マッチド・グリップにしないメリット」がないのである。

唯一、レギュラー・グリップがマッチド・グリップに勝る点があるとすれば、それは「見た目」である。前述の通り、レギュラー・グリップはジャズ・ドラマーに多用されているフォームである。聞き手側としても「ジャズ・ドラム=レギュラー・グリップ」というイメージを持っている人は多い。また、櫻井が通っていた大学の先生は、ビ・バップなどのジャズを演奏する時に「(演奏に)気持ちが入る」という理由だけでレギュラー・グリップを使っている。このことからレギュラー・グリップは、ギターで言うところの「長いストラップ」にたとえられる。短いストラップの方が圧倒的に演奏しやすいが、長いストラップの方が(一部ジャンルにおいて)格好良い。

レギュラー・グリップを使う際に最も心がけなければならないことは、「マッチド・グリップと同じ音を出す」ということ。ロックなどのパワーが求められるジャンルでレギュラー・グリップを使っているドラマーが周りに何人かいるけれど、すべからく左手のバック・ビートが弱い。見た目は格好良いかもしれないが、音楽的に死んでいる。できていない、という自覚がある上で下手な演奏をしているなら、それはもうその人の勝手だけれど。

余談だが、この記事にアップした3枚の写真は、いずれも自撮りである。両手がふさがった状態でどうやって自撮りしよう、と小1時間悩んだ結果がこれである。ちなみに、三脚やタイマーの類は使っていない。トリックがわかった人は撮影風景を想像して大笑いしていただきたい。

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