ブラシ

ドラムセットを演奏する際に用いる道具の一種で、細いワイヤーを束にし、先端を扇状に広げたものです。スティックのように叩いて音を出すだけでなく、ドラムヘッドをこすって音を出す「スイープ奏法」など、独特の奏法とサウンドを持った道具であり、主にジャズの分野で用いられます。

もともとは、20世紀初頭、室内の演奏で音量をコントロールできないドラマーが、スティックの代わりにプラスティック製のハエたたき(フライ・スワッター)を用いたことが始まりとされています。その後、金属製のワイヤーを用いたブラシが開発され、今の主流となっています。

ブラシには、「ジャズ・ドラマーしか使わない」というイメージを持たれる傾向にあります。実際、ポピュラーやロック音楽では、滅多に用いられません。これは、アンプなどによって増強された音に対し、ブラシは、音量で負けてしまうからです。ジャズの分野でも、シンセサイザーなどの電子楽器が用いられ始めた1970年代以降、ブラシは陰を潜めています。

まだまだパフォーマンス面で進化の余地を残している、可能性のある道具です。また、ブラシは、スティック・コントロールの練習にうってつけな道具でもあります。ブラシは、よくしなる材質でできているため、スティックよりもリバウンドを拾いづらく、柔らかい素材なので、十分なスピードをもって叩かないと、ちゃんとした音が出ません。無駄のない、脱力したフォームで叩かないと、まともに演奏できないのです。



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裏を返せば、「ブラシでできることは、スティックでは余裕でできる」ということになります。実は、僕が音大で最初に習ったことも、「ウィル・コックソン(ドラムの基礎練習)をブラシで演奏する」でした。フォームに関する基礎練習では、これに勝るものはないと思います

ちなみに、僕がドラムを始めたきっかけの1つが、ブラシでした。ギターを買って、Fコードでつまづき、「自分にできそうな楽器はないものか」と考えていた時のことです。ビル・エヴァンスのピアノの後ろで鳴っている、ポール・モチアンの「サーッ」というスイープ奏法を聞いて、「これなら俺にもできる!」と思ったのが発端でした。

「テクニックはいらなそうだし、別にこれ(スイープ音)なくてもいいんじゃね?」と思っていたので、当時はポール・モチアンをかなり見下していました。モチアンと(勝手に)和解したのは、大学に入って、彼のソロをトランスクリプション(コピー)してからです。

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