ドラムを始めたばかりの生徒様に「ティモさんは最初にどんな練習をしていましたか」と訊かれたことがあります。誰でも最初は初心者なわけですし、講師が初心者だったころを知りたいと思うのは自然なことです。僕は自分の通ってきた道が100パーセント正しいとは思っていませんし、同じ道を歩んで欲しいとも思いませんが、ある程度は参考になるかもしれません。生徒様が何かを悟って、成長していただければ幸いです。
ドラムを始めたのは高校生の時で、当時習っていた講師は「課題曲を中心にレッスンを進める」という方式をとっていました。音源をMDに入れて渡してくるのですが、譜面はありません。いちおう、模範演奏はしてくださるのですが、アレンジが過ぎて全く参考にならないのです。それでいて「次のレッスン(2日後)までに叩けるようになってきて」と言うのですから、「曲を聞いてコピーする(覚える)」というのが最初の課題、つまり、練習したことでした。
ドラムのフレーズを叩くのも大変でしたが、曲の構成を覚えるのに苦労した記憶があります。友人たちが原曲をアレンジしたり、講師が「もっと難しいテクニックをやろう」と提案したりするのを横目に、「可能な限り原曲通り叩く」を繰り返していました。たぶん、3年間で20曲くらいしかコピーしていません。だいたい2ヶ月に1曲というペースです。
高校を卒業した直後は何を思ったか、「もう人から教わるようなことはない」とバンド活動を始めました。主な活動は友人たちを結成したバンドと、キリスト教会の賛美チームの2つです。友人とのバンドはオリジナル曲のみで活動していたため、「ドラム・パターンをどう作るか」という創造面が鍛えられました。ゼロから作るわけではなく、似たような曲からパターンを借用し、アレンジしていきました。高校時代に友人たちがやっていたことを、ようやく実践し始めたわけです。平行して曲のコピーもやっていましたが、バンド活動に使えそうな楽曲しかコピーしていません。
賛美チームは普通のバンド演奏とはかなり違っていて、「曲の構成ががっちり決まっていない」という特徴があります。リーダー(主にボーカリスト)は演奏中、聖霊に導かれるままメロやサビを繰り返したり、静かになったり盛り上がったりするため、ミュージシャンは瞬時に判断、対応できるようにならなければなりません。ジャズのインプロビゼーションやアドリブがこれに近いと思います。もちろん、心理面、精神面においても大きな成長がありました。このような環境は頑張って手に入るようなものではないので、本当にラッキーだったと思います。
ここに書いたことが全てというわけではないですが、重要なポイントは挙げたつもりです。すなわち、腕ではなく耳と頭を鍛えることです。