「バンド界のビートルズ」みたいな存在

ふつう、「〇〇界の〇〇」という言い回しは、ある分野のエキスパートを別の業界のエキスパートで例える比喩表現の一種です。たとえば、「AさんはB界のCさん」という言い回しであれば、AさんはB界のエキスパートですが、CさんはB界とは他分野のエキスパートです。それにも関わらず、AさんとCさんに何らかの因果関係がある場合、この比喩が用いられます。

もう少し具体的に例えると、「手塚治虫は漫画界のピカソ」のように使います。言うまでもなく、手塚治虫は漫画界のエキスパートです。ピカソは画家で、絵を生業としていますが、漫画界のアーティストとは言えません。手塚治虫は『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』などの有名作品の他に数多くの作品を残しており、この点がピカソと共通しています。

これだけ前置きした後になんですが、今回は比喩表現ではなく、「その界隈において偉大過ぎるため、かえって話題にしづらい存在」についてです。表題のビートルズが良い例で、バンドをやっているミュージシャンに「すごいと思うバンドは?」と訊いたところで、ビートルズはわざわざ名前を挙げるまでもない存在です。もちろん個人差があるので例外はありますが、「それはそうとして、他にある?」という雰囲気になりがちでしょう。

ジャズ界ではチャーリー・パーカーがこれに当たります。ジャズをジャズたらしめる要素を確立したビバップ時代のサキソフォニストで、この人がいなければ今日のジャズはない重要なアーティストですが、「チャーリー・パーカーが好き」と公言するジャズ・ミュージシャンはあまり多くないように思えます(個人の感想です)。かくいう僕もビバップのファンで、パーカーも大好きですが、もし「好きなビバップのミュージシャンは?」と訊かれてもセロニアス・モンクかバド・パウエルかチャールス・ミンガスを挙げるでしょう。なんとなく、パーカーの名前を口にするのがはばかれるのです。

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マイルス・デイビスも同じで、ジャズ玄人様の前で「マイルス・デイビスが好きです」と言おうものなら「いつの(マイルス)」と訊き返されてしまいます。ジャズの歴史を何度も塗り替えたアーティストですから、さながら「ジャズ界のピカソ」といったところでしょうか。

そういえば以前、教会で「好きな聖書の登場人物は?」という話題になった時、とある子どもが「イエス・キリスト」と答えたのですが、周囲の大人は「それは無し(例外)でしょ」と言っていました。当時の僕は大人寄りの考え方をしていたので、お恥ずかしい限りです。

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