音楽的とは何か【その2】

前回(『音楽的とは何か【その1】』)の続きです。

◯ハーモニー

音と音の重なりのことで、一般的には和音のことを指します。ピアノやギターのように単一でハーモニーを奏でる楽器もあれば、コーラス・グループのように複数によってハーモニーを奏でる楽器もあります。ボーカリストが1人だけでも、他の楽器と音が重なれば和音になります。

では、ドラムのようにピッチ(音程)の不明瞭な楽器はハーモニーと無縁かと言うと、そうではありません。たしかに、音楽理論の和音とはほとんど無関係ですが、音楽の要素である「ハーモニー」とは何も和音だけとは限りません。「響き」という言葉を使えばわかりやすいでしょうか。たとえば、「フェザリング」はジャズ・ドラムのテクニックですが、音を強く出しすぎるとベースのウォーキング・ラインを潰してしまいます。

前回「メロディは脚本に書かれた台詞のようなもの」と書きましたが、それに倣うならハーモニーは役者の声のトーンや大きさ、あるいは表情や動きと言えます。ホラー映画で幽霊がいきなり現れた瞬間、主人公が「きゃあ! 助けて!」と笑いながら言ったらどうでしょう。殺人鬼が迫る中、「来ないで!」と叫びながら三輪車にまたがったら恐怖も何もないでしょう。台詞が合っていても、トーンや動きがそれに則していなければ台無しになってしまいます。

ところで僕は昔、役者業を営む友人と一緒に大阪にある某有名テーマパークへ遊びに行ったことがあります。そこで某サイボーグ映画の舞台(3Dメガネをかけるやつ)を見たのですが、友人はサイボーグのアクション・シーンにたいそうご立腹でした。理由を訊ねると、「サイボーグはあんな軽々とスライディングできない」だそうです。見ている人は見ているのです。



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閑話休題、音楽にも楽曲に則した響きがあります。前述のフェザリングのように、周りの楽器を潰すなんてもってのほかです。たっぷり歪ませたドンシャリサウンドでトゥーファイブ・フレーズを弾いたり、レガートしながらヘッドバンギングしたりしても、トラディショナルなジャズには合いません。

また、ドラム・セットはシンバルやタム、スネアなど、複数の楽器をまとめた複合楽器です。演奏者はドラマー1人ですが、シンバルがスネアやタムの音を潰してしまわないように注意しなければなりません。シンバル同士の響きも大事です。高いお金を払ってオールドKのライドを買ったとしても、左足のハイハットが響きを殺してしまっては意味がありません。

次回へ続く。

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