値段の高いスティックと安いスティックの違い

楽器店のドラム・コーナーへ行くと、多種多様のスティックが並べられています。手に取ってみると、太さや長さといった形状の違いや、黒や赤といった見た目の違いに気づけるはずです。ところが、ほとんど同じような形状、同じような見た目にも関わらず、値段が倍近くするモデルもあります。たとえば、どのメーカーも出している「5A」という標準モデルは、チップ(先端)の形状は多少異なりますが、長さは406ミリ前後、太さは14ミリ前後と共通しています。値段は平均1,000円で、メーカーによって100円前後の差があるものの、高いもので1ペア1,400円安いものだと1ペア600円と大きなギャップがあります。「高いスティックは品質が良い」というのはなんとなく察しがつくと思いますが、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。

◯木材の種類

スティックに使われている木材で最もポピュラーなのは「ヒッコリー」ですが、他にも「メイプル」「オーク」といった木材も使われます。ヒッコリーを基準にすると、メイプルは割高、オークは割安と、木材そのものの値段に差があります。そのため、メイプル製のスティックはやや高価、オーク製のスティックはやや安価になる傾向があります。木ではなくアルミによって作られたスティックもあり、3,500円ほどします。前述の5Aにしても、ヒッコリーが1,000円ならメイプルは1,100円、オークなら900円ほどになるのです。「オークは品質が悪い」というわけではなく、単に木材が安いから低価格を実現しているだけです。ただ、メイプルやオークはヒッコリーに比べ硬質であるため折れやすい、という特徴があります。ヒッコリーがシェアを獲得しているのは、この辺が理由なのではないでしょうか。

◯木材の質

同じヒッコリーで値段にバラつきがある場合は、木材の質の違いと考えて良いでしょう。木の質が違うとどう影響があるのかと言うと、まず音が変わります。高品質な木材は音の粒立ちや立ち上がりが良く太く抜けの良い音を作りやすくなります。また、湿気にも強く、曲がりにくかったり、ささくれにくかったりするなど、耐久性も高くなります。冒頭に挙げた1,400円と600円のスティックはどちらもヒッコリー製ですが、安いモデルはチップがすぐに欠けたり、折れたりしやすいのです。高いモデルは安いモデルの2ペア分以上の値段ですが、安いモデルよりもずっと長持ちするため、結果として安上がりになることが多いのです。



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◯シグネチャー・モデル

同じメーカーかつ同じ質のヒッコリーなのに値段が高いモデルは、著名なアーティストの名を冠した「シグネチャー・モデル」の可能性があります。そのアーティストならではのサイズや形状になっていることが多いのですが、中には5Aなどの標準モデルとほとんど変わらないものもあります。この場合、値段の差は性能差ではなくデザイン料、あるいは広告料と言えます。

このように、高いスティックと安いスティックには違いがあります。しかし、演奏の良し悪しを最終的に決めるのは、ドラマーの腕であることを忘れてはなりません。

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