まだ小学生になる前の子が「仕事は何をしているの？」という質問の後に「どんな車に乗っているの？」と大人に訊いていました。「サラリーマンでプリウス……平凡ねえ」みたいな格付けがしたいのではなく、警察官はパトカー、消防士は消防車という風に、「すべての職種に、その職種専門の車がある」と思っているようでした。その子にしてみれば、セブン-イレブンのアルバイトは全員セブン-イレブンのトラックに乗って出勤しているわけです。夢のある話です。ちなみに、セブン-イレブンのトラックはセブン-イレブン・ジャパン（会社）に業務委託された運送会社の持ち物であり、セブン-イレブンのものではないため、アルバイトは乗れません。
職種によってそれぞれ専門の車があるとして、ミュージシャン専門の車とはどんな車でしょう。普通に考えたら『ハイエース』ですが、動く物置がミュージシャンの車というのはちょっと夢がありません。アメリカの荒野を走るような大型トレーラーで、コンテナをカウンタックみたいに横開きさせるとPA完備のステージになり、いつでもどこでもライブができる、みたいな車はどうでしょう。夢はありますが、日本だと確実に捕まります。
あとは、高級車でしょうか。少々古いですが、ロックスターと言えばキャデラック、みたいな風潮もあります。ちなみに僕は中学生のころ、『キャデラック』はお酒の種類だと思っていました。ベンツは高級車だと知っていましたが、メルセデスはカクテルか何かだと思っていました。浜田省吾の『MONEY』という曲は「純白のメルセデス」の後に「ベッドでドン・ペリニヨン」と続くため、「この人飲んでばっかやな」と子どもながらに思ったものです。
しかし最近の子どもは賢いので、ミュージシャンが貧乏であることくらいお見通しかもしれません。「どうせ中古の軽トラとかでしょ」とあおる小学生がいてもおかしくありません。そんな時は「本物の貧乏は車なんて買えない」と負け惜しみを言ってやりましょう。
