シェンムー3で見る、新しいビジネスの可能性について

セガ社がおよそ14年ぶりに「シェンムー・シリーズ」の続編、『シェンムー3』を制作する、と話題になりました。どれくらい話題になったかというと、第3者によってYouTube上にアップロードされたトレーラーの再生回数が、10万を突破したほどです。ちなみに、その動画は日本語で検索してもヒットしませんでした。さらにちなむと、同じタイミングで話題になったFF7リメイクのトレーラーは、公式動画だけでまもなく900万回を超えようとしています。

シェンムー・シリーズは、セガ社のゲームハード「ドリームキャスト(以下、ドリキャス)」のソフトで、1986~87年代の横須賀(『シェンムー』)と中国(『シェンムー2』)を舞台に、主人公が公園でひたすら拳法の特訓をしたり、家政婦からもらった小遣いを使ってゲームセンターで遊びまくったり、バイトで稼いだお金でガチャガチャをしたり、フォークリフトでレースしたり、とにかく自由に「オープンワールドを楽しむ」が売りのゲームでした。「製作費70億円!」をキャッチコピーに、極めて先進的なシステムを採用しており、とりわけ、1,000人近くいるであろうNPC(いわゆるモブキャラ)の1人1人に名前や誕生日、1日の行動パターンまで全てプログラムする無駄っぷりには、世界が驚きました。ゲーム中に極めてリアルな仮想現実を作った先駆者であり、この傾向は後に、同社の「龍が如くシリーズ」へ継承されています。

ところがこのシェンムー・シリーズ、興業的にはセガ史上最悪の失敗と言われています。最大の原因は「とにかく制作費をかけ過ぎた」ですが、「ドリキャスが売れなかった」というのも1つの要因です。個人的な統計ですが、発売当時、櫻井は小学生で、100人くらい同級生がいましたが、ドリキャスを持っていたのは僕を含めて3人しかいませんでした。単純計算で3パーセントの人しか持っていないのか、と幼いながらに思いましたた(実際はもう少し多いと思います)。また、ゲームが先進的過ぎて、時代に合わない「早すぎたゲームだった」という背景もあるでしょう。これは、「インターネット接続を可能にするゲームハード」を売りにしたドリキャス本体にも言えることです(当時は今ほどインターネットが普及していませんでした)。当初の予定では全11章というボリュームの予定だったストーリーも、ソフトが売れなかったためシェンムー2で事実上の制作打ち切りとなり、「未完」の代名詞的作品となっていました。



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そして今回、まさかの続編制作となったわけですが、やっぱりシェンムー、制作発表の時点ですでに先進的なことをやってのけています。それが「キックスターター」です。電脳に疑似記憶を植え付けるウィルスみたいな名前ですが、噛み砕いて言うと「一般のユーザーから制作費を募るシステム」のことです。ディレクターの鈴木裕氏のインタビューを読む限り、まず、ストーリーを完結させるための最低ラインとして200万ドル(およそ2億5,000万円)必要で、それ以上の付加価値、たとえば、従来のシェンムーにあったミニ・ゲームや世界観で遊びたい場合は、より多くの投資をしてください、という狙いがあるようです。

ファンが望むものをファンの投資によって制作するというのは、物が売れない今の世の中に光明を刺す、新しいビジネスの可能性の1つだと思います。問題なのは、今回も「早すぎるアイディアなのでは」という懸念があることです。2度あることは……げふんげふん。

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