アニソンだけを演奏して暮らしていけるか


現代は猫も杓子もアニソンが売れる時代です。新人アーティストはアニソンのタイアップが取れるかどうかでその後の進退が決まりますし、著名なアーティストもこぞってアニソンを歌うようになりました。2017年に入ってから放映されたアニメの数はおよそ200本(映画等も含む)あります。それぞれにオープニング・テーマとエンディング・テーマがありますし、アニメによっては複数使用している場合もあります。声優ソングやキャラソンといった亜種を含めたら500曲以上あるのではないでしょうか。1日で3曲、1ヶ月で90曲です。1枚1,000円が平均3万枚売れたとすれば、1日換算で1億円近い金額が動いていることになります。

これだけ需要があるのですから、ミュージシャンはアニソンだけを演奏していれば暮らしていけるのではないか、と思えてしまいます。たしかに、売上の1パーセントが収入になったとして、1曲で30万稼げます。人ひとりが暮らしていくには十分な額と言えるでしょう。しかも、1か月で1日しか働かなくていいのです。残りの29日を使って、撮り溜めたアニメをゆっくり消化できるでしょう。アニメ好きにとっては夢のような生活です。しかし、この計算には大きな穴が2つあります。

○この生活が許されるのは90人もいない

アニソンが制作されるのは1ヶ月に平均90曲と書きましたが、DTMで制作された楽曲も多く、全ての楽曲が生演奏による録音とは限りません。また、生演奏だったとしても、自分の担当楽器が必ず求められるわけではありません。アコースティック調のアニソンにはドラムが不要だったり、ヘビーメタル調のアニソンにバイオリンなどのクラシック楽器はお呼びでなかったりするのです。その少ない枠をミュージシャン全員で取り合わなければなりません。仮にアニソン・アーティストのギタリスト枠が50あったとしましょう。日本のギター人口はおよそ600万人と言われています。全員がこの枠を狙っていたとすれば、倍率は12万倍、100分率で表すと約0.0008パーセントです。これは宝くじを連番で100枚だけ買って、1等の3億円を当てるのに等しい確率です。しかも、それを毎月、ずっと続けなければならないのです。



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○担当した楽曲が3万枚売れるとは限らない

100歩譲って宝くじを当てる確率で、毎月1曲コンスタントに採用されたとしましょう。その楽曲が毎月3万枚売れる保証はどこにもありません。オリコンのCD週間売上ランキングによると、3万枚以上売り上げを出しているのはトップ3の曲だけでした。繰り返しになりますが、これを毎月ずっと続けるのです。そこまで有名になったら、他にもっと良い仕事が回ってくるのではないでしょうか。もちろん、30万枚売れる可能性はあります。それでも300万円、低めの年収にしかなりません。300万枚売れたとしても10年分です。コンビニのバイトを続けた方がまだ安定しています。

このように、アニソンだけを演奏して生活できるのは、ほんの極わずか、一部の人間だけです。講師業にしたって、アニソンの需要は全体の2パーセントほどしかありません。普通に講師業した方が50倍は稼げるでしょう。何より、アニソンは今がピークであり、今後は衰退していくのが目に見えています。ニーズは0にはなりませんが、収益は確実に減ります。もってあと5年くらいではないでしょうか。今からアニソン・ミュージシャンになるには遅すぎるような気がします。

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